中小寝具メーカー、小売店激減で立たされた窮地「こうなったら自分で商品を売るしかない」

中小寝具メーカー、小売店激減で立たされた窮地「こうなったら自分で商品を売るしかない」

かつては真面目で地道に商品を作れば、それだけで堅実な売上が出ていた中小寝具メーカー。しかし、人々のライフスタイルの変化やビジネスのグローバル化により、周囲の状況は大きく変わっていきます。多様化する消費者ニーズ、安価な海外製品の流入など、対策が必要な問題が増え続け、従来通りの手法のままでは生き残れないことは明白でした。

寝具専門店減少、中小メーカーは厳しい局面へ

消費者のニーズが多様化したことによって苦しい状況におかれたのは、私たちのようなものづくりメーカーだけではありません。寝具専門店も同様です。

 

かつて寝具専門店は、人々の暮らしの身近にありました。嫁入り道具として寝具一式を寝具店で仕立てたり、使い込んで硬く薄くなってしまった布団の打ち直しを依頼したりといった具合に、専門店は布団のことをなんでも相談できる窓口のような存在でした。

 

しかしそういった関わりは、私たちのライフスタイルの変化とともにいつしか姿を消していきます。近所にあった寝具専門店がいつのまにか廃業していたという経験をした人もいると思います。

 

この30年ほどの間で寝具専門店の減少は著しく、総務省・経済産業省の「平成28年経済センサス」によると、1991年には1万8679あった寝具小売業の事業所は、2016年には5070にまで数を減らしています。

 

寝具専門店がこれほどまでに少なくなってしまった背景には、寝具を扱う製造メーカーや卸業者を取り巻く環境の変化があります。もともと、製造メーカーと消費者の間には、次のような品物の流れがありました。

 

製造メーカー

 ↓

一次卸業者

 ↓

二次卸業者

 ↓

小売業者・小売店

 ↓

消費者

 

一次卸業者はメーカーから直接品物を仕入れ、仕入れた商品は二次卸業者や小売業者・小売店に販売します。一次卸業者には生産業者または海外から商品を直接仕入れ、小売業者・小売店に直接販売する「直卸」と、次段階の卸業者に販売する「元卸」があります。

 

こういった流通構造は近年急速に短縮化していき、一次卸や二次卸の中抜きが進みました。中抜きというのはメーカーと小売業者とが、卸業者を通さずに商品の取引を行うことです。大手チェーン店の多くが、このような流通形式をとっています。

 

卸業者を介さないことで、小売業者が短期間で商品を受け取れたり、商品を安く仕入れられたりするといったメリットが生まれました。

 

本来卸業者が存在することの利点としては、卸業者によって在庫が担保されたり各店舗の会計の管理がなされたりするといったことがありました。また、消費者から要望を吸い上げて企画をメーカーに提案する商品開発などの機能も担っていました。いわば職人気質なメーカーと小売店との橋渡し役になってきたのです。

 

しかし最近では小売りが製造卸を介さず自ら輸出入取引を行う直接貿易も拡大し、その存在意義が問い直されるようになっていきました。

 

さらになんといっても影響が大きかったのは、SPA型の大手家具・インテリア製造小売などの台頭です。

 

SPAとはSpeciality store retailer of Private label Apparelの略で、商品の企画から製造、物流、プロモーション、販売までを一貫して行う小売業態のことです。もともとアパレル業界で使われるようになった言葉で、ユニクロやGAPの業態がいい例です。

 

寝具に関していうと、イオンやニトリがプライベートブランドの商品を企画・製造し、独自の物流網を築き上げてプロモーションや販売までを一貫して行っています。

 

その影響を受けて寝具類卸売業は1991年の時点で1868あった事業所が、2016年には632まで減少しています(総務省・経済産業省「平成28年経済センサス」)。

 

このように商品と消費者の窓口となっていた寝具小売店が約4分の1にまで減少し、その小売店との橋渡しをしてくれていた卸売の事業所数も3分の1に減っているという事実があります。これを受けて「良いものを作る」ということに集中していればよかった中小ものづくりメーカーも、変わらざるを得ませんでした。

 

「自分たちで開発した商品を、自分たちの手で売らなければならない」という局面に立たされたのです。

 

 

龍宮株式会社 代表取締役社長
梯 恒三

 

 

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