不渡りを出しながらも、周囲からの温かい支援に支えられ立ち直りかけた、九州の衛生用品会社。しかし、せっかくの新製品は不発となり、また、取引先の工場が操業停止になるなど、苦難が続きます。もう後がない状況で社長が思いついたのは、自社を助けてくれた地元への恩返し、地場産業用の製品づくりでした。そして、そこから新たな道が開けることになります。
時代を先取りした「救急セット」は不発に…
どんなに苦しい状況にあっても父は常に新製品の開発を考えていてまだ世に出ていないもの、よそにはできないもの、それでいて少しでも人の役に立つものを開発したいというものづくりの精神をもっていました。
この頃に開発したのは、ガーゼに脱脂綿を取りつけた「プラスガーゼ」という製品です。これを基に何か新しいものができないだろうかと考えて救急セットを作ってみたものの、売上は芳しくありませんでした。
新しい製品を作ってはみるものの、なかなか売れないという状況を打破するべく開発した自信作が「清潔フキン」でした。脱脂綿にガーゼをつけたものを改良し、フキンとして売り出したのです。今でも、中に綿の入ったフキンは斬新なものです。実はこれが「パシーマ」の原型となります。
この商品で波に乗ろうという矢先、不運なことにハニーの工場が操業停止になってしまいました。ということは、私たちが受注していた脱脂綿加工の仕事もゼロになるということを意味します。
再建の道に暗雲が垂れ込めたとき父が悩んだ末にたどりついたのは、地場産業のパートナーになろうということでした。
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1956年12月6日生まれ、福岡県うきは市出身。
1980年3月に熊本大学機械工学科を卒業し、日本機械学会の「畠山賞」を受賞。大学在学中に創業者の父・禮一郎に請われて、一年間休学して家業を手伝う。大学卒業後に龍宮に入社。2012年に三代目の代表取締役社長に就いた。
「パシーマ」一筋の経営を展開し、数々の賞を獲得。2021年には「JBAヘルスケア認定寝具(TM)」「地域未来牽引企業」に選ばれた。「パシーマ」の売上を順調に伸ばし、商品バリエーションも増え、社業を発展させている。日本睡眠改善協議会(JOBS)の「睡眠改善インストラクター」の資格をもつ。
座右の銘は「天網恢々疎にして漏らさず」「曲なれば全し」。
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