空室がないホームは入居が困難になる
老人ホームという場所を考えた場合、論理的に考えて、そのような難問に当たることは、まずありません。冷静に考えればわかることです。
老人ホームに入居する高齢者は、いったいどこから来るのでしょうか? 多くは病院です。つまり、病院の医師から退院許可が出た高齢者が老人ホームに来ます。引き続き高度なレベルの医療処置、つまり医療機関でなければ対応できない医療処置が必要な高齢者の場合、そもそも、退院許可が出ないので、老人ホームに入居するということは制度上はありえません。
次に多いのが自宅です。自宅で、家族や介護事業者、在宅医療従事者の支援を受けて生活している高齢者です。この場合、主たる介護者は家族です。ほかの介護施設からの転ホーム組も、老人ホームに入居してくることがあると思います。
したがって、高度な医療処置が必要な入居者は、老人ホームの入居対象者ではないということがわかるはずです。せいぜい、医療依存度の高い高齢者がいる程度です。この場合の医療依存度とは、医療従事者でなければできない施術のことを言い、たんの吸引や注射などを指さします。
つまり、老人ホームにおいて受け入れ態勢が弱いホーム、「このような状態の入居者は受け入れることができません」というホームの大半は、優秀な医療従事者(多くは看護師になりますが)の配置ができていないということなのです。さらに言うと、できないのではなく、やらない、やりたくない、面倒くさい、ということになると思います。
あるホームの看護師は、「自分以外は、まともに臨床経験もなく、ただ資格を保有しているだけの名ばかり看護師なので、医療処置を任せることができない。したがって、自分で対応できる範囲を超えた場合は、入居者の受け入れを拒否せざるをえない」と言っていました。これが、今の多くの老人ホーム内で起きている現実です。
だから、どうしても良いホームという視点で老人ホームのことを考えたい方は、入居率の高いホーム、空室がないホームを探す以外に方法はありません。なお、もう、お気づきのことと思いますが、空室がないホームは、当然、入居すること自体が困難になります。
小嶋 勝利
株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役