(※写真はイメージです/PIXTA)

入居率、入居維持率の双方が高いホームは、一般論として「良いホーム」と考えて問題はありません。さらに教育も大事になってきます。老人ホームの裏の裏まで知り尽くす第一人者の小嶋勝利氏が著書『間違いだらけの老人ホーム選び』(プレジデント社刊)で解説します。

相性のいいホーム、相性の悪いホーム

■入居率の高いホームは良いホーム 

 

老人ホームに「良い」「悪い」はありません。これが私の持論です。

 

あるのは、相性が良いホームと悪いホームです。しかしながら、多くの読者の方は、このような連載を読む以上、そうは言っても「良いホームはあるはずだ」と考えるのではないでしょうか。そこで、今回は、「良いホーム」について解説していきます。

 

入居率、入居維持率の双方が高いホームは、一般論として「良いホーム」と考えて問題はない、と私は考えています。逆に、いつまでたっても、空室ばかりのホーム、いつでも多くの空室を抱えているホーム、このような現象があるホームは、悪いホーム、ダメなホーム、と言ってよいはずです。

 

その理由を説明していきます。老人ホームの運営実態について、老人ホームの入居基準、受け入れ態勢は、きわめて曖昧で介護看護職員に大きく左右されてしまいます。この論をもって、次のような論が成り立ちます。

 

能力の高いホーム長や施設長、介護職員や看護職員が働いているホームは、どのような状態の入居者でも受け入れることができるので、結果、空室は少ない。逆に、空室がなかなか埋まらない老人ホームは、配置されている職員の質が低いため、“多少難あり”という入居者の受け入れを拒絶してしまうので空室が発生している、と考えることができます。

 

よって、良いホームとは空室がないホームという理解でかまいません。したがって、良いホームに自分の親を入居させたいと考えている人は、空室のないホームを探して入居させればいいわけです。

 

大雑把に言えば、この考えで問題はありません。多少、考慮しなければならないことは、入居希望者の身体状態の評価について、医療と介護の立場の違いによって、議論が起こることです。しかし、私の経験で言うなら、ダメなホームは、入居を断わる方向で双方が調整に入り、良いホームは、多少難のある入居者ではあるが、どうすれば自ホームで受け入れることが可能なのかを考える、という違いがあるということです。

 

もう一つ、良いホームの条件を記しておきます。

 

ほとんどの人が、ホーム選び時にほぼ無視しているのですが、良い老人ホームは、職員教育に力を入れています。ちなみに、「職員教育」に力を入れていますか? と聞けば、「力を入れています」とすべてのホームが回答します。しかし、私の見解はその逆で、多くのホームは「職員教育」に力を入れていません。正確に言うと「職員教育どころではない」というのが本音だと思います。

 

ところで、どのような外形が確認できれば、ひとまず、職員教育を熱心にやっているホームなのかといえば、まず、ホームや会社の組織図に「教育部」「指導部」のような専門部署があるかどうかです。さらに、その部署が、どこにあるかも重要です。教育に熱心な会社では、社長など経営者の直下に置いているケースもあります。これは、介護職員の教育は、社長である自分が直接かかわっていく、という強い意志の表れからそうなります。

 

もちろん、絵に描いた餅も少なくはないため、機能しているかどうかの確認は必要ですが、その確認は、施設長やホーム長をはじめとする現場職員と話をすれば、おおむね判断することができるはずです。

 

念のため、申し上げておきますが、みなさんは、私が老人ホームにおいて、なぜ「教育部」という組織の存在が重要だと言っているのかおわかりになりますでしょうか? 多くの老人ホームの場合、老人ホーム内で介護や看護業務を実施しています。そして、その介護と看護業務を実施している者が現場職員です。当たり前です。

 

次ページ老人ホームの教育には2つの機能と目的が

※本連載は小嶋勝利氏の著書『間違いだらけの老人ホーム選び』(プレジデント社刊)から一部を抜粋し、再編集したものです。

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