投資に必要なのは潤沢な資金と時間と情報
■「現金」の価値を再確認する
世界がグローバルにつながったことで、さまざまな危機が頻繁に起きるようになってきています。
2020年には、新型コロナウイルスが世界中に伝播し、それが収まらないうちに、資源高、エネルギー価格の高騰、穀物高などで、インフレに火がつきました。
こうした予測不可能な状況下で、株価も為替も債券も、乱高下しています。
ただ、こうした中でも価値を保っているのが現金です。
日本は1991年のバブル崩壊からずっとデフレという状況が続いてきました。そして、デフレの中で価値が相対的に上がっているのが「現金」なのです。
■なけなしの貯金を使った投資は無謀
もし、あなたが余分のお金をたくさん持っているなら、私は投資を勧めます。
今のような先がわからない時こそ、大失敗することもありますが、大儲けできるチャンスもあるからです。
ただこれは、投資でお金を失っても、失敗に耐えることができる人の話です。
投資に必要なのは、“潤沢な資金”と“時間”と“情報”。
たとえば、100万円で株を買って、値上がりすれば誰もが儲かりますが、値下がりして、仮に50万円になった時に、なけなしのお金で買った人はそれが100万円に戻るまで待ち続けないと損をしてしまいます。けれど、50万円になった時にさらに100万円ぶん買える人は、株価が70万円に戻れば儲けが出ます。
つまり、“潤沢な資金”がある人なら、儲かる確率も高いのです。
だから、給料が増えないなか、将来が不安で爪に火を点ともすように貯金を増やしているという人は、投資などしてはいけません。
儲かればいいけれど、それでなけなしの貯金を失ってしまったら、デフレの中ではなかなかそれを取り戻すことができないからです。
■スタグフレーション対策には現金
繰り返しになりますが、コロナ禍で、日本の貯蓄率が急激に上がっています。
2020年の貯蓄額は、前年の5倍の35.8兆円にも達しました。前述のように一律に配られた10万円も、消費には回らずに貯蓄に回ったようです。
なかでも、世帯主が65歳以上の世帯の貯蓄率は高く、平均が2324万円で、なんと2500万円以上の世帯が3分の1となっています。
これは、至って正常な動きと言えます。
なぜなら、不安定な経済状況の中で、現金の価値が上がっているからです。
食料品やエネルギー価格が上がって、世界的に「インフレ」と言われていますが、インフレになったら上がっていくはずの給料が、日本ではまったく上がっていない状況です。
給料が上がっていないだけでなく、この給料に連動して決まる公的年金の支給額が2021年度は0.1%のマイナスとなり、2022年度も0・4%のマイナスとなりました。年金の額は、3年間の給料の平均で決まるので、来年度の年金額も下がることでしょう。
これまで日本は、給料も下がるけれど物価も下がるというデフレという状況でしたが、この先は、給料が上がらない不況の中で物価だけが上がっていくスタグフレーションという状況に陥っていく可能性があります。
こうしたなかでは、投資環境も不安定になっていく危険性もあります。
だとしたら、それほど余裕がない普通のご家庭では、イザという時のために、住宅ローンなどの借金があるなら返し、なるべく多く現金を持っておくことです。