節約で「老後2000万円問題」も解消
『老後の資金がありません!』という映画が、累計動員数100万人を超え、話題になりました。
この映画には、私もちょこっと出演させてもらっているので、多くの人に観ていただけたことはうれしいです。
この映画がヒットした背景には、前田哲監督の才能と天海祐希さんをはじめとした芸達者な俳優さんの奮闘がありましたが、それだけでなく、老後のお金に対するみなさんの不安が大きかったことがあったのでしょう。
■新型コロナでまさかの黒字化
老後のお金については3年前、金融庁の審議会が「老後資金が2000万円不足する」という報告書を出し、大騒ぎになりました。
この報告書は、総務省統計局の調査をもとにしたもので、高齢者世帯は収入に比べて支出が月に約5万5000円多く、これが30 年続くと、生活費だけで約2000万円のお金が不足し、貯蓄を切り崩していかなくてはならないというものでした。
もともと、この報告書は「老後のお金が2000万円も足りなくなるから、今のうちに投資をしなさい」という趣旨のものでしたが、この前段の「2000万円足りなくなる」というインパクトが大きすぎて、大騒ぎになりました。
ところが、新型コロナウイルスの蔓延で、状況が一変しました。
表は、「老後2000万円不足する」という報告書のもとになった総務省「家計調査」(2017年)のデータと、2020年の「家計調査」でわかった高齢夫婦無職世帯のデータです。なんと、生活費が不足するどころか、1110円余るという結果になっています。つまり、「老後2000万円問題」は、解消したということです。
なぜ、こんな結果になったのかといえば、「老後2000万円不足問題」で衝撃を受けた高齢者が、コロナ禍を機に、お金を使わずに貯め込むようになったからです。
外出が減り、娯楽費や交際費が大幅に減っただけでなく、2020年は、1人10万円の現金給付があったので、この一部が貯蓄に回ったのではないかと推測されます。
結果、2020年の同じ総務省の「家計調査」では、月約5万5000円だったはずの赤字が消えただけでなく、一転1110円の黒字となりました。
コロナ禍では、多くの人が「自分の身は自分で守らなくては、政府もあてにならない」と感じました。皮肉なことに、菅義偉前首相が所信表明演説で強調した「自助」の精神は、国民がコロナに罹っても入院させられなかった政府の無策さに表れています。そのため、せっせと節約し、貯蓄を増やしました。
「自分の身は、自分で守らなくてはならない」。そんな時代になっていることを、まずしっかりと心に刻みましょう。