(画像はイメージです/PIXTA)

香港在住・国際金融ストラテジストの長谷川建一氏(Wells Global Asset Management Limited, CEO)が「香港・中国市場の今」を解説していきます。

20日の香港・中国株式相場は大幅反発

ハンセン指数 20,717.24pt(+2.96%)

中国本土株指数 7,121.18pt(+3.22%)

レッドチップ指数 3,896.76pt(+1.58%)

売買代金 1,226億7百万HK$(前日1,211億1百万HK$)

 

中国人民銀行が5年物ローンプライムレートLPR(最優遇貸出金利)を0.15%引き下げ4.45%にすると発表した。5年物LPRの引き下げは今年2回目である。

 

一方で1年物LPRは3.70%と現行のまま据え置いた。5年物LPRは住宅ローンの基準となる金利で、大半の融資は1年物LPRに基づいて決められる。

 

他方、一般の融資に関しては、預金準備率を下げるなどして、足元で流動性が潤沢な状況にあることを勘案して、引き下げを見送ったのだろう。

 

今回の5年物LPRの引き下げ幅は、2019年にLPRが現行の制度に移行してから、最も大幅な引き下げである。5年物LPRの引き下げだけが実施されたことは、不動産市況の回復を意図したものであると解釈できる。

 

中国人民銀行と中国銀行保険規制委員会は先週15日に、商業銀行に対して、初回住宅購入者の住宅ローンの金利を0.20%幅で引き下げることができるよう緩和措置を発表したが、これに続く措置と思われる。今回の5年物LPR引き下げと合わせて、不動産市場のテコ入れ対策を打ってきたということだろう。

 

ただ、住宅ローンテコ入れと今回の5年物LPRの引き下げだけでは不動産会社の資金繰り難は緩和されないとの見方も根強い。

 

LPR引き下げを受けて、20日の香港・中国株式相場は大幅反発した。ハンセンテック指数は他指数をアウトパフォームし4.74%高。中国スマートフォン大手のシャオミ(1810)は5.9%高。同社が昨日公表した1-3月期決算では、売上高が前年比4.6%減の733.5億元、最終損益は損失の影響で赤字に転落し、上場以降初めて減収となったもの売りは限定となったようだ。

 

今週決算を発表し大きく売られたテンセント(700)やEコマース大手のJD.com(9618)、検索大手のアリババ(9988)などが反発し全体の指数を押し上げた。一方、不動産株については冴えない動きだった。不動産管理サービスの碧桂園服務(6098)は0.8%下げた。

 

中国の債券市場は資金流出が続く

中国人民銀行(PBOC)が発表したレポートによると米国の利回りの上昇と人民元安を背景に、4月は3ヵ月連続で海外投資家が中国債券の保有を縮小したことを発表した。

 

内容によると、海外の機関投資家は中国のインターバンク市場で保有する人民元建て債券を4月に3兆7,700億元(約5,600億ドル)、前月から1,085億元(約161億ドル)減少した。前月の3月は1,125億元(約167億ドル)の減少だった。特に、海外投資家は中国国債を420億元分(約62億ドル)、政策銀行が発行する債券を約407億元(約60億ドル)削減した。

 

背景は米国の金利が急ピッチに上昇し、米国10年債は5月上旬には節目の3.0%を超え10年ぶりに中国10年債金利を上回った。足元続く人民元安も追い風となった。

 

中国では足元続く「ゼロコロナ政策」も経済再開の足枷になっていることが投資家心理の懸念につながっている可能性が高い。上海については6月半ばから段階的な解除を進める方針も、20日上海では検疫エリアの外で6日ぶりに新たな感染者が確認されたと発表した。

 

19日の上海での感染者は858人と前日の719人から増加。また同時に検疫エリアの外で3人の陽性者が発表された。北京でも62人と前日の55人から増加している。

 

足元の中国経済への刺激策が下支えも不透明感が残る。

 

米国10年債(青線)は中国10年債(赤線)を上回る

 

 

長谷川 建一

Wells Global Asset Management Limited, CEO/国際金融ストラテジスト<在香港>

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