不定愁訴や精神症状の裏にある、「血糖調節」の問題
標準的な医療では原因が分からない「不定愁訴」の場合、グルテンに対しての過敏症やそれ以外の食材に対する「遅延型アレルギー」反応が関係している場合があります。グルテン過敏症や遅延型フードアレルギーというのは標準的な医療では扱わない疾患概念なので、通常の検査や診察では分からないことも多いのです。それは、身体症状だけに限らず、精神的症状にも関係します。
同じように「不定愁訴」の原因となる病態に「機能性低血糖症」というのがあります。抑うつ症状や繰り返すパニック症状、原因の分からない倦怠(けんたい)感など、ともすれば「精神的なストレス」が原因とされるような病態も、実は血糖の不安定な上がり下がりが関係している場合があります。
今回は「機能性低血糖症」について見ていきましょう。
■低血糖症の原因は、急激な血糖上昇「血糖値スパイク」
機能性低血糖症というと、常に血糖が下がった状態を思い浮かべると思います。しかし、この病態では食後に急激に血糖が上がり、その反動で急激に血糖が下がることが本質です。その意味では「機能性血糖調節障害」という病名のほうが適していると思います。
少し前まで低血糖症は、糖尿病の治療で血糖降下薬やインスリンを使用している人か、インスリンを分泌する内分泌腫瘍(インスリノーマ)がない限り起こらないと信じられてきました。しかし、食後に急激に血糖が上がる「血糖値スパイク」という病態があり、急激に血糖が上昇した後に急激なインスリン分泌が起こり、急激に血糖が下がり始めます。そのため「ジェットコースター型」という場合があります。つまり低血糖症は「血糖値スパイク」と呼ばれる食後の高血糖が原因で起こるのです。
低血糖症の対処方法としては二つあります。
①糖質制限を行う
一つ目は、糖質を摂ることが血糖値スパイクの原因になるので、糖質制限を行うことで、急激な血糖値スパイクが起こりにくくなり、低血糖症を起こしにくくする方法です。
②補食を摂る
二つ目は、血糖が下がる時間帯に、血糖を上げるように補食を摂る方法です。低血糖症を起こす少し前の時間帯に補食を摂ることで、血糖の急激な降下を防ぐことができます。ただし、補食に糖質を摂り過ぎるとまた血糖が乱高下する原因にもなりますので、①をメインに行った上での補助的な対応策だと思ったほうがいいです。
しかし、これらはあくまで対症療法であり、根本的な治療法ではありません。根本的に血糖値スパイクとその後に続く低血糖症を治療するためには、なぜ血糖値スパイクが起こるのかを知る必要があります。