(※写真はイメージです/PIXTA)

現代社会で多くを占める慢性疾患には、慢性炎症が深く関わっていることが分かってきました。そして、慢性炎症を起こす大きな要因となっているのが、環境毒素や生体異物といった“毒素”です。慢性炎症、ひいては慢性疾患を防ぐカギとして、ここでは「腸内環境」について解説します。※本稿は、小西統合医療内科院長・小西康弘医師並びに株式会社イームス代表取締役社長・藤井祐介氏との共同執筆によるものです。

慢性疾患を防ぎ、健康を保つカギは「腸内環境」にあり

これまでの連載で、身体のバランスを維持するためには腸内環境を整えることが重要であるということを、いろんな角度から説明してきました。私たちが普段お世話になることの多い標準的な治療では、なじみのない考え方かもしれませんが、機能性医学では表面に出てきたいろいろな症状や病気の根本にアプローチするには、身体の土台を整えることが重要だと考えます。そして、身体の土台と腸内環境とはいろいろな面で密接に関係しているのです。

 

「腸活」という言葉は、今では日常生活で頻繁に使われています。とはいえ、「どうして腸活することがいいのか」という質問の答えには困ってしまうのではないでしょうか? 腸内環境を整えることは、単にダイエット効果があるとか、便秘が解消するとかというだけでなく、身体のバランスを整える上で非常に重要なのです。

腸内環境が悪化するとどうなるのか?

これまでは腸内細菌叢(マイクロバイオータ)のバランスが崩れることが、私たちの身体にどのような影響を与えるのかについて書いてきましたが、今回はまず、消化管の基本的な機能である、消化分解機能が低下するとどうなるのかということについて見ていきたいと思います。

 

消化機能が低下し、胃酸がきちんと分泌されていないと消化酵素が活性化されず消化不良を起こします。タンパク質を分解する酵素の一つであるペプシンは、その前駆体であるペプシノーゲンが胃酸によって活性化されることが必要です。胃酸の分泌が低下するとペプシノーゲンが活性化されず、タンパク質を十分に分解できなくなります。

 

消化不良を起こした未消化なタンパク質が腸に流れ込むと、腸の中で異常発酵を起こし腸管毒素(エンドトキシン)を放出するようになります。食肉を摂り過ぎるとがんのリスクが高くなるという話を聞いたことがある人もいるかと思います。これは、食肉の造られる工程によってはさまざまな抗生物質や環境ホルモンが検出されることがあるからです。つまり、食肉自体が悪いというよりも、タンパク質を消化する機能や、あるいは食肉に含まれる抗生物質や環境ホルモンなどの成分を分解する機能が低下することで、未消化なタンパク質や有害な成分が身体に蓄積し、がんの発症リスクを高めることが考えられます。

 

もちろん、どのようなものを食べるのかを選択することも重要ですが、食べたものを害のない物質にきっちりと分解、解毒するためには、自分自身の消化、分解機能を高めることが重要です。そのために腸内環境をきっちりと整えることが重要なのです。同じものを食べていても、栄養素として身体にプラスに働くか、毒素を増やす原因になってネガティブに働くかは、その人の腸次第と言っても過言ではありません。

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自己治癒力を高める医療 実践編

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