〈認知症〉脳萎縮の原因とは?アルツハイマー病の「3大リスク要因」【医師が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

アルツハイマー病はどうして起こるのでしょうか? 最近、発症の原因として有力視されるようになった「慢性炎症」を中心に見ていきましょう。※本稿は、小西統合医療内科院長・小西康弘医師並びに株式会社イームス代表取締役社長・藤井祐介氏との共同執筆によるものです。

「認知症の原因疾患」第1位、アルツハイマー病

日常生活に支障をきたす記憶およびその他の知的活動能力の消失を、総称して「認知症」と言います。その60〜80%を占めるのがアルツハイマー病で、脳の変性疾患の中で最も多いものです。

 

アルツハイマー病にかかると、脳全体で神経細胞が死に、組織が喪失します。長期間にわたって大半の機能に影響を与えながら、脳が徐々に萎縮してくるのです。では、どうして脳の神経細胞が萎縮してくるのでしょうか? その原因についてはまだよく分かっていない点も多いです。

 

しかし最近、脳神経細胞の萎縮の原因は「慢性炎症」であるという説が唱えられ、有力視されています。今回はその説を中心に見ていくことにしましょう。

アルツハイマー病の原因とは?

アルツハイマー病は、長い期間をかけて脳の中で生じる「複雑な一連の事象」によって発症すると考えられています。

 

「複雑な一連の事象」とは随分と取ってつけたような言い方ですが、要するに、まだ完全には解明されていないということです。

 

現在考えられている原因として、遺伝、環境および生活習慣などの複数の因子が絡み合っています。遺伝子構成や生活習慣は人によってさまざまなため、それぞれの因子がアルツハイマー病の発症の危険性を上昇させたり低下させたりする上で、どの程度大きな影響を与えるかは人によって異なります。

 

■遺伝的要因

アルツハイマー病についての研究が進むほど、研究者は、遺伝子がこの病気の発症に重要な役割を果たしているという認識を深めています。

 

若年性アルツハイマー病は30〜60歳の人に発症し、原因となりうる3つの遺伝子のうち、いずれかの変化によって引き起こされることが分かっています。しかし、アルツハイマー病全体において、若年性アルツハイマー病が占める割合は5%未満です。

 

アルツハイマー病の患者の大半は、通常60歳以降に発症するいわば老年性です。老年性アルツハイマー病は、アポリポタンパクE(APOE)遺伝子との関連について多くの研究が行われています。

 

アポリポタンパクというのは脂肪を運ぶタンパク質のことです。このタンパクにはいくつかのサブタイプがあります。そのうちの一つであるアポE4は、アルツハイマー病発症リスクを上昇させることが分かっています。2本ある遺伝子のうち、アポE4が1つあればアルツハイマーにかかるリスクが30%上昇、2つあれば50%以上になります。1つもない人ではリスクは9%です。

 

脂質を運ぶリポタンパクのサブタイプによって、どうしてアルツハイマー病の発症率が変わってくるのかについては、後で説明しましょう。

 

■従来の定説「アミロイド仮説」

アルツハイマー病について少し知識のある人であれば、一度は「アミロイドβ(ベータ)」という物質の名前は耳にしたことがあるでしょう。アミロイドβは脳内で作られるタンパク質の一種です。アルツハイマー型認知症の発症に大きく関わっていると考えられており、現在でも「アミロイドβの脳組織への蓄積により、脳細胞が死滅することが原因で起きる」と説明されていることも多いです。この説を「アミロイド仮説」と言います。

 

私たちも医学生のころには、この「仮説」が確定した事実であるかのように教えられてきました。では、どうしてアミロイドβというタンパク質がアルツハイマー病の原因であると考えられるようになったのでしょうか?

 

20世紀の初めドイツの医学者アルツハイマー博士は、生前に妄想や記憶障害のあった女性の脳組織を顕微鏡で調べ、脳の萎縮や脳内のしみのようなもの(老人斑)、脳神経の中に糸くずのようなもつれ(神経原線維変化)を発見し、世界で初めて報告しました。

 

そして、その後の研究でこの糸くずのようなもつれは、アミロイドβが沈着したものであることが分かったのです。アミロイドβは、アルツハイマー型認知症に見られる老人斑の大部分を構成しているたんぱく質であることから、アミロイドβが沈着することで脳神経細胞が死滅し、アルツハイマー病を発症すると考えられるようになったわけです。

 

しかし、考えてみればアミロイドβが、アルツハイマー病の発症に何らかの関係があるとしても、これでは根本的原因が分かったことにはなりません。

 

アミロイドβが沈着することで、脳神経細胞が死滅することは事実であるとしても、では、どうしてアミロイドβが沈着するのかという疑問は以前不明のままなのです。例えるならば、アミロイドβはたまたま目に付いた実行犯のようなものです。麻薬密売の売り子を逮捕したところで、麻薬組織のような大元を取り締まらない限りは同じことが繰り返されるようなものではないでしょうか。

医療法人全人会 小西統合医療内科 院長 総合内科専門医
医学博士

京都大学医学部卒業。天理よろづ相談所病院・京都大学消化器内科などで内科全般を研修し、消化器内科を専門とする。内科医として約20年病院勤務。現在は、小西統合医療内科院長として、機能性医学を柱とした統合医療の立場から診療に携わっている。

【小西統合医療内科HP:https://www.konishi-clinic.com/

機能性医学に関する情報をFBなどで発信しています。
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https://lit.link/doctorKonishi

著者紹介

株式会社イームス 代表取締役社長
メタジェニックス株式会社 取締役
株式会社MSS 製品開発最高責任者 

欧米で生化学と栄養学を学び、製品の研究開発並びに医療コンサルティング会社を立ち上げる。

2009年に機能性医学をいち早く日本に紹介し、現在は日本の医療従事者へのソリューション提供や講演活動に従事している。

著者紹介

連載自己治癒力を高めるための機能性医学

自己治癒力を高める医療 実践編

自己治癒力を高める医療 実践編

小西 康弘

創元社

病気や症状は突然現れるのではなく、それまでの過程に、自己治癒力を低下させるさまざまな原因が潜んでいます。だからこそ、対症療法ではなく根本原因にまで遡って治療を行うことが重要なのです。 本書では、全人的な治癒を…

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