「糖尿病患者における認知症」の二大原因
認知症には大きく分けて、2種類あります。まず「脳血管性認知症」は、脳を栄養する血管が動脈硬化になり、血流低下をきたすことで起こります。ラクーナ梗塞というまだら状に脳細胞が壊死をするのを特徴とし、症状的にもまだら状の認知機能低下をきたします。
それに対して、もう一つの「アルツハイマー病型認知症」では、血流低下による脳神経細胞の壊死ではなく、アミロイドβの蓄積による壊死が起こっています。
最近の『Lancet Neurology』の総説に、図表1のような糖尿病における認知機能障害の発症機構がまとめられています。
<文献1>
Biessels GJ, Staekenborg S, Brunner E, Brayne C, Scheltens P. “Risk of dementia in diabetes mellitus: a systematic review,” Lancet Neurol, 2006; 5: 64-74.
図表1を見ると、糖尿病患者においては、動脈硬化により脳血管の血流が低下することによる血管性の脳機能低下と、アミロイドβが沈着し、高血糖状態による糖毒性で脳機能低下の要因があり、そのどちらもが、脳機能低下を起こし、認知症の発症リスクを高めるということです。前者が脳血管性認知症の、後者がアルツハイマー型認知症の原因となります。
2型糖尿病における認知症の二大原因として、脳血管の動脈硬化とアルツハイマー病があるということが分かっていただけたと思います。糖尿病の患者さんが、どれほど脳血管性認知症(Vascular Dementia:VD)とアルツハイマー病(AD)を合併しやすいのかを示した、合併リスクの研究がいくつか報告されています。それによると、糖尿病の人が脳血管性認知症になるリスクは2.0~3.4倍です。さらに、アルツハイマー型認知症になるリスクは1.2~2.3倍で、いずれも糖尿病のない健常な人と比べて高値です。