(写真はイメージです/PIXTA)

共同購入や相続などが原因で発生する「共有不動産」。トラブルが生まれやすいため、可能な限り解消した方が望ましいといえます。本記事では、不動産法務に詳しいAuthense法律事務所の森田雅也弁護士が共有不動産が生まれる原因とその解消方法、またその際の注意点について詳しく解説します。

不動産の共有が生まれてしまう要因

不動産の共有が生じる原因はさまざまですが、なかでも主な原因は次の2つです。

 

共同での購入

不動産が共有となる1つ目の原因は、不動産を共有で購入することです。

 

不動産の共有持分は、原則として購入にあたって拠出した資金の比によります。なお、拠出した資金と持分の比率との差が生じる場合には、贈与税の対象となります。

 

たとえば、5,000万円の土地を購入するためにAが3,000万円、Bが2,000万円を拠出した場合には、Aの共有持分は5分の3、Bの共有持分は5分の2となります。このように、資金を出し合って不動産を購入した場合には、不動産は共有となります。

 

ただし、兄弟姉妹で不動産を共同購入するケースはさほど多くはなく、多くは夫婦間や親子間であることが一般的です。

 

■夫婦間での不動産共有の対処法

夫婦間の不動産共有の場合には、事前の対策を適切に講じれば大きな問題とはならない場合が少なくありません。

 

対策の例としては、たとえば夫婦がそれぞれお互いに共有持分を相続させる内容の遺言書や、妻も夫も遺言書で長男など特定の相続人に不動産の共有持分を相続させる旨の遺言書を作成しておくことなどが考えられます。

 

このような対策を講じておくことで、次世代での共有を防ぐことが可能です。

 

ただし、なんら対策をしなければ次世代への相続を機に共有関係が広がってしまう可能性がありますので、事前の対策を講じておきましょう。

 

また、それぞれが不動産の共有持分を有する夫婦が離婚をした場合には、離婚の時点でどちらか一方が相手方の共有持分を買い取ったり、財産分与で名義を変更したりといったことを検討する必要があります。

 

離婚の時点で対策をしておかなければ、将来相続が発生した際にそれぞれの再婚相手同士の共有となるなど、大きなトラブルの原因となりかねないためです。

 

■親子間での不動産共有の対処法

親子間での不動産共有の場合には、親に相続が発生した際に、もう一方の共有者たる子に親の共有持分が相続されるよう遺言書を作成しておくことで、共有持分の分散を防ぐことができます。

 

ただし、不動産の共有持分が親の財産全体に対して高額である場合などには遺留分の問題が生じるため、共有不動産のみならず財産全体をみてバランスを考慮した対策が必要です。

 

相続

共有不動産が生まれる最も大きな原因は相続です。複数の相続人がいる場合の遺産の分け方はさまざまですが、主に次のものが挙げられます。

 

現物分割:「A土地は長男、自宅土地建物は二男、預貯金は長女……」など、財産をそれぞれそのままの形で各相続人が相続する方法
代償分割:主な遺産がA土地しかない場合などに、長男がA土地を相続する代わりに長男から二男と長女へそれぞれ1,000万円を支払うなど、金銭のやり取りで調整して相続する方法
換価分割:遺産を売却した対価を分けて相続する方法

 

これらは一長一短であり、遺産の内訳や事情によっては採用できない方法もあります。たとえば、相続人それぞれがきっちり自分の取り分を主張しているにもかかわらず、主な遺産がA土地しかない場合などには、現物分割は選択できないでしょう。

 

そうであるからといって代償分割をしようにも、A土地を相続する人に他の相続人へ代償金を支払えるだけのお金がなければ、この方法の選択も困難です。

 

また、たとえば長男がA土地の上に自分の家を建てて家族で住んでいる場合などには、土地が他人の手にわたってしまう換価分割も現実的ではありません。

 

このように他の方法が取れない場合に、やむを得ず共有相続とする場合があります。共有相続とは、A土地について長男、二男、長女がそれぞれ3分の1の持分を有するなど、不動産を共有する形で相続する方法です。

 

こういった事情から、相続を機に共有となってしまう不動産が少なくありません。

 

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本記事はAuthense不動産法務のブログ・コラムを転載したものです。

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