「共有物分割請求訴訟」の主な判決パターン
共有物分割請求訴訟となった場合、いくら訴訟を提起した人が望んだとしても、「共有者の一方がもう一方に無償で共有持分を明け渡せ」などといった、一方にとってのみ不利益となる判決が下されることはまずありません。
判決の主なパターンは、次のとおりです。土地が長男と二男で2分の1ずつの共有になっている場合の例でみていきましょう。
「価格賠償」…共有状態をお金で解決
価格賠償とは、共有状態をお金で解決する方法です。
たとえば、二男が自身の共有持分を長男へ移転して土地を長男の単独所有とする代わりに、長男から二男に対してその対価を支払う場合などがこれに該当します。
「現物分割」…土地を切り分けて単独で所有させる
現物分割とは、土地を切り分けてそれぞれを単独で所有させる形で解決する方法です。
たとえば、500平方メートルの1筆の土地が共有となっている場合に、その土地を250平方メートルずつの2筆へと分筆するなどして、西側を長男に、東側を二男にそれぞれ割り当てる場合などがこれに該当します。
ただし、そもそも土地が狭く、2筆に分けてしまうと使い道が限られてしまう場合などにおいては、原則としてこの方法は選択されません。
「換価分割」…土地を売却し対価を分ける
換価分割とは、土地を競売(けいばい)によって売却してその対価を分ける方法です。非常にシンプルではありますが、土地の所有権を手放すこととなってしまいます。
また、一般的に競売による売却価格は通常の売却をした際の価格よりも低くなることが多いこともデメリットです。
「共有物分割請求訴訟」はデメリットも大きい
当事者同士で共有解消に向けた話合いがまとまらない場合には、共有物分割請求訴訟で共有の解消をするほかありません。しかし、共有物分割請求訴訟はデメリットも大きいといえます。主なデメリットは次のとおりです。
解決までに時間がかかる
共有物分割請求訴訟は、その解決までに時間がかかることが少なくありません。かかる期間は案件や状況などによって異なりますが、おおむね半年程度は要することが多いでしょう。
望み通りの判決とは限らない
たとえば、長男と二男が共有している土地の共有物分割請求訴訟を長男が提起したとしても、長男が望むとおりの判決が下されるとは限らない点に注意が必要です。
長男が二男の共有持分を取得したいと考えていても、長男の持分を二男が取得するという長男の希望とはまったく反対の結論が下される可能性もゼロではありません。また、換価分割との判決が出てしまえば、せっかくの土地を手放すことになってしまいます。
思わぬ判決が下されてしまわないためにも、共有物分割請求訴訟を提起する際には、あらかじめ土地の共有に詳しい弁護士とよく相談をし、入念に準備をして臨むようにしましょう。
◆まとめ
不動産の共有はトラブルの原因となることが多く、可能な限り解消した方が望ましいといえます。すでに共有状態となってしまっている場合には、できるだけ早いうちに共有物分割請求を検討しましょう。
また、特に相続などの場面では、新たに共有状態の土地を生んでしまわないよう注意が必要です。
森田 雅也
Authense法律事務所 弁護士
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