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株価調整の「逃げ道」としての米国ハイ・イールド債券

また、もうひとつの「逃げ道」として、米国ハイ・イールド債券は、景気後退時に下値が限定的で、戻りが早いことが特徴です。

 

[図表6]2000年と2007~08年の米国ハイ・イールド債券
[図表6]2000年と2007~08年の米国ハイ・イールド債券


シンプルにいえば、①『炭鉱のカナリア』ゆえに、先行して調整をみせる分、他の資産クラスが調整するときには調整が終わっている可能性が考えられますし、②債券であるため、利下げや金利低下による恩恵を受けて下値が限定的であるほか、エクイティとは異なり、デットであるため、中央銀行が金融危機を防ぐために介入(救済)を受けやすい点も挙げられます。

 

実際、2020年のパンデミック後は、FRBがハイ・イールド債券の買い入れファシリティを作りました。一度作られたファシリティは、次の景気後退を含む流動性が減るタイミングでも作られるでしょう。

 

また、以前にも強調したとおり、米国ハイ・イールド債券は、リスク・リターンが良好です。

 

筆者は、米国ハイ・イールド債券を「ポートフォリオのアンカー」と考えています。他方で、日本の個人投資家のみなさんは、このところずっと、この資産クラスを売却されてきました。

 

いまは、無理をする必要はないでしょう。成長株式を買いたいなら、インフレの鈍化を確認したときに入ればよいでしょうし、バリュエーションの調整が終わったときに入ればよいでしょう。「そんな機会を待っていたら買い場を逃す」と思われるかもしれませんが、筆者は、そのくらいおおざっぱに長期の相場を取れればよいと考え、自分のポートフォリオを運用しています。

 

あるいは、「成長株式推奨の多数派」と、(筆者のような)「分散投資推奨の少数派」のどちらか一方を信用することは避けて、両方が言っているものに分散させればよいでしょう。

パウエル議長記者会見の争点

米連邦準備制度理事会(FRB)は、5月3日、4日のFOMCで0.5%の利上げを決定しました。

 

パウエル議長の記者会見で興味深かったのは、政策金利を、中立水準を上回る「引き締め的な水準」にまで引き上げるかどうかについてのやりとりです。

 

議長は「政策金利を中立水準に戻すことを急いでいる。ただ、そのときに経済や金融市場でなにが起きているかについては、いまはまだわからない。そこから先はそのときに考える」と述べました。

 

これに対し、3人の記者がそれぞれ「民主党や共和党の大統領に助言した経済学者たちと話したが、彼らはどちらも、FRBはインフレに対して非常に遅れており、景気後退は避けられないと言っていた」、

 

「他の委員は、政策金利の水準を、中立を超えた引き締め的な水準にまで引き上げる必要があると言っているが、議長はこの考えに同意するか。インフレを下げるために、景気後退に耐える勇気はあるか」、

 

「これだけインフレが高まっているのに、なぜまだ躊躇しているのか。それ(政策金利を引き締め的な水準に引き上げるかどうか)を判断するために、他になにをみる必要があるのか。この時点ですでに引き締め的な水準にまで引き上げようとするはずではないのか」とつっこみました。

 

議長は、冒頭と同じ回答を繰り返すだけでした。

 

議長は2018年の秋に、「中立を超える水準にまで引き上げるかもしれない」と発言し、株式市場が大幅調整したことを憶えているために明言を避けたのかもしれませんが、筆者には「インフレが落ち着いてくるのをただ祈っている」というスタンスに思えました。

 

一部のメディアは「大幅利上げ」と強調していますが、先週も述べたとおり、現在予想されている利上げのペースや、最近の10年金利の上昇程度では、インフレは抑制できそうにありません。

 

議長のスタンスは、割安株式やリートにとってみると有利かもしれませんが、やがては、急速な引き締めを迫られることになります。その備えのため、米国ハイ・イールド債券や国債なども合わせて検討する必要があるでしょう。

 

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