(※写真はイメージです/PIXTA)

糖尿病の発症リスクを減らすためには、内臓脂肪を溜めないようにすることが重要です。今回は、内臓脂肪を溜めないようにする方法として、最近話題になっている「糖質制限」について見ていくことにしましょう。もともとは糖尿病の治療として提案された方法ですが、糖尿病リスクの低減やダイエット効果もあるとして、ネット上や書籍でもたびたび見かけるようになりました。しかし「白米や小麦を摂ってはいけない」といった極端な情報もあり、糖尿病のない人が行うにあたっては注意が必要です。※本稿は、小西統合医療内科院長・小西康弘医師並びに株式会社イームス代表取締役社長・藤井祐介氏との共同執筆によるものです。

穏やかな糖質制限、厳格な炭水化物制限を区別するべき

糖質制限には「穏やかな糖質制限」と「厳格な炭水化物制限」があるという考え方を書きました。私は、「穏やかな糖質制限」は、健常な人でも、高インスリン血症を避けるという意味で妥当だと思います。

 

一方「厳格な炭水化物制限」では、炭水化物を1日20g以下にまで制限する必要があります。「ケトジェニックダイエット」とも言われますが、これは、身体を生理的ケトーシスの状態にすることが目的です。

 

身体の中にどれほどのケトン体が発生しているのかを測定する機器があって、マニアックな人たちの中ではケトン体が上がった量を競争することもあるそうです。一種のゲーム感覚なのかもしれませんが、達成感を得たくて楽しむのであれば、それは個人の自由だと思います。

 

しかし、ケトジェニックダイエットは最近提唱され始めたダイエット方法です。

 

これまでは脳はブドウ糖しか利用することができないと考えられてきましたが、実はケトン体もエネルギー源として利用できることが分かってきました。それどころかブドウ糖よりもケトン体のほうが脳の機能を高めるとさえいう意見もあります。ケトジェニックダイエットを推奨する人の中には、ケトン体には老化を予防する効果もあると主張する人もいます。しかし、いずれも動物実験レベルでの結果です。それはそれで非常に興味深いことであり、これからの研究が進むことを期待したいと思います。

 

しかし、少なくとも現時点ではケトン体の長期的な効果については、ヒトのレベルではまだまだ分かっていないのが現状です。健康な人に対してすすめられるものではないと思います。動物実験レベルで研究されている段階なのに、それをはっきりさせず、さもヒトにおいても有望な方法だというような伝え方はどうかと思います。現実に確認できている「事実」と、今後の「期待」とを混同して述べることは科学者としては控えなければいけないと思います。

 

 

今回の記事では、糖質制限についてまだまだその功罪は十分には分かっていないことがあるということが伝わったでしょうか。現時点で分かっていることとそうでないことを誤解されないように分けて書いたつもりです。

 

糖質制限の話に限らず、健康情報については極端な意見が容易にネット上や書籍でアウトプットされる時代です。耳や目から入ってくる情報をそのまま信じていると、思ってもいない落とし穴にはまってしまう可能性があります。健康に対しての関心が高いということはとても素晴らしいことですが、このような落とし穴にはまるリスクもあるのだということを意識していくことが、いっそう求められる時代でもあるのです。

 

あふれる健康情報に振り回されないためにも、情報を見極めるリテラシーを高めていくことがとても大切だと思います。

 

 

小西 康弘

医療法人全人会 小西統合医療内科 院長

総合内科専門医、医学博士

 

藤井 祐介

株式会社イームス 代表取締役社長

メタジェニックス株式会社 取締役

株式会社MSS 製品開発最高責任者

 

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