健康な人も糖質制限をする意味はあるのか?
よく「XXは血糖値が上がりやすく、糖尿病になりやすくなるので食べてはいけない」ということをネット上や書籍で見ることがあります。「XX」は白米や小麦が挙げられることが多く、食べてはいけない食品とされていることがあります。時には医者の中でも、GI(=グリセミックインデックス。ある食べ物を食べたときの血糖の上がりやすさを示す指標)の高い白米や小麦は糖尿病になるから摂ってはいけないと書いている人がいます。そういった情報を読むことで、白米や小麦を摂ることに何となく罪悪感を抱いておられる人もいるのではないでしょうか。
しかし、必要以上に罪悪感を覚えなくても済むよう、なぜそのように言われているのかを正しく理解していくことが大切です。
■健康な人であれば、「高GI食品」を摂っても血糖値スパイクは起こらない
ここまで読んでくださった方は、正常なインスリン分泌能を持つ健常な人が白米や小麦を食べたからといってすぐに高血糖症になったり、糖尿病になったりするわけではないことを分かっていただけたと思います。
糖質を摂り過ぎて肥満症になるとインスリン抵抗性になり、高血糖症になるわけですが、そうなるまでにはある程度の年月がかかるのです。白米や小麦を悪者とする説には、この数年間という時間の流れを無視している場合が多いです。その意味では必要以上に神経質になる必要はないと思います。
耐糖能が正常な人は糖質を摂っても、インスリンが分泌されて血糖は正常範囲に抑えられます。食後に急激に血糖が上がるわけではありません。食後に急激に血糖が上がることを「血糖値スパイク」と言いますが、健常人では、GIが高い食材が血糖値スパイクを起こすというのは医学的に見ても正しくありません。このことを区別しないで書かれている情報が多いように思います。
■健康な人が本当に注意するべきは「高インスリン血症」
だからといって炭水化物を無制限に摂ってもいいということではありません。健康な人が糖質を摂り過ぎることで問題があるとすれば、食後に血糖を下げようとして分泌されるインスリンの量が高くなることのほうが問題かもしれません。たくさんのインスリンが分泌された状態を「高インスリン血症」といいます。
健常な人が糖質を摂ると血糖を下げようとして、インスリンが分泌されます。GIが高い食材ほど血糖が上がりやすいので、多くのインスリンが分泌されて血糖を下げようとします。インスリンが多く分泌されるほど、脂肪の吸収が高まり、内臓脂肪が溜まりやすくなります。肥満症はインスリン抵抗性を起こし、糖尿病のリスクが高くなるのです。
脂肪を吸収して膨張した脂肪細胞からは炎症性サイトカインが放出され、さらにインスリン抵抗性を悪化させるという悪循環になります【図表】。
低インスリンダイエットというのは、肥満の原因になるインスリンをできるだけ出さないで済むように、糖質をできるだけ摂らないようにしましょうという考え方です。このような考え方は、健常な人においても正当性があると思います。