危険な高血糖を防ぐには?食事制限をするより「摂るべきモノ」【医師が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

高血糖状態に陥る理由は、「炭水化物や甘いものを摂り過ぎたから」ではありません。私たちの身体には、血糖を下げるホルモン・インスリンを筆頭に血糖を一定の範囲内に保つ機能があります。健康な人であれば、一時的にたくさんの炭水化物を食べたとしても、一定の範囲以上に血糖が上がることはありません。高血糖症の主原因は、インスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」です。インスリン抵抗性はなぜ起こるのか、防ぐにはどうすればよいのか、見ていきましょう。※本稿は、小西統合医療内科院長・小西康弘医師並びに大阪大学大学院医学系研究科研究員・藤井祐介氏との共同執筆によるものです。

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なぜインスリン抵抗性が起こるのか?

■アディポカインとインスリン抵抗性

インスリン抵抗性は、脂肪細胞から分泌されるサイトカインと密接に関連しています。

 

私たちの身体にある脂肪細胞は、余分なカロリーを中性脂肪として蓄える貯蔵器官であると考えられていましたが、実はさまざまな生理活性物質(サイトカイン)を分泌する内分泌臓器としての働きもあることが分かってきました。

 

通常の状態では、脂肪細胞からはアディポネクチンやレプチンと言われる善玉のサイトカインが分泌されています。アディポネクチンは脂肪の分解を促進し、インスリン抵抗性を改善します。レプチンは食欲を抑える作用があります。

 

 

健常な人が食べ過ぎて一時的に太った場合、脂肪細胞が細胞分裂を起こして、余分の脂肪を蓄えます。すると、脂肪細胞からはアディポネクチンが分泌されて、脂肪が分解されます。またレプチンの作用で食欲も減るので、体重が減るのです。つまり、自動で体重を調節するシステムが働きます。

 

ところが、腸内環境が悪化し、腸管のバリア機能が低下すると、腸管内に増えたリポ多糖(LPS)という物質が血液中に流れ込みます。リポ多糖は、脂肪細胞に作用して炎症を起こし、細胞が分裂するのを妨げます。この状態でカロリーを過剰に摂取すると、細胞は風船を膨らませたように膨張し、悪玉化して炎症を起こすサイトカインが分泌し始めます。

 

悪玉化した脂肪細胞から分泌される炎症性サイトカインには何種類かありますが、その中の一部がインスリン抵抗性を高めます。するとインスリンが効きにくくなるため、高血糖状態に陥ります。膵臓は血糖を下げようとして、さらに多くのインスリンを分泌するようになるのです。この状態を高インスリン血症と言います。

 

インスリンには血糖を下げるだけではなく、脂肪の吸収を高める作用があるので、インスリンの値が高くなると、その作用で脂肪細胞に中性脂肪が蓄えられ、脂肪細胞がさらに膨張します。膨脹した脂肪細胞からは悪玉のアディポカインが分泌されて、さらにインスリン抵抗性を増強するという悪循環が起こるのです。

 

[図表2]インスリン抵抗性を増強させる悪循環

 

内臓脂肪の状態は「メタボリック症候群」の診断でも必須項目

「メタボリック症候群」というのは皆さんも聞かれたことがあると思います。太っておなかの出た人を「メタボちゃん」と言ったりもしますよね。

 

おなかの内臓に脂肪が溜まり腹囲が大きくなる「内臓肥満」が、高血圧や糖尿病、脂質異常症などを引き起こしやすくし、動脈硬化を進行させる危険が高まるという考え方に基づいて提唱された疾患です。

 

ここでいう内臓肥満というのが、脂肪細胞が膨張して悪玉のサイトカインを出している状態です。

 

このメタボリック症候群はきちんとした医学的な診断名で、診断基準もあるのです(図表3)。

 

[図表3]メタボリック症候群の診断基準

 

ここで、内臓脂肪の状態が必須項目になっています。つまりそれだけ内臓肥満が重要視されているということです。その理由は、脂肪細胞から分泌される炎症性サイトカインは、インスリン抵抗性以外にも、身体に慢性炎症を起こし、動脈硬化だけではなくがんも含めた慢性疾患の原因となるからです。

 

つまり、メタボリック症候群は、それ自体が身体に慢性炎症を起こすだけではなく、インスリン抵抗性から糖尿病の発症を起こし、体内に糖化や酸化を発生させるということです。

 

内臓脂肪がどれほど身体にとって悪影響を与えるのかを示した、非常に興味深い実験があります。マウスをいくつかのグループに分けて、肥満と寿命との関係について調べたものです。

 

第1のグループではカロリー制限をして肥満を起こさないようにコントロールしました。

 

第2のグループから第4のグループまでは好きなだけ高カロリーの餌を与えて、肥満を起こさせました。

 

第2のグループはそのまま肥満した状態で寿命を調べました。

 

第3のグループでは肥満させた後で、内臓脂肪を切除しました。

 

第4のグループでは第3グループと同様に肥満させた後で、皮下脂肪を切除したのです。

 

第2のグループのマウスは第1のグループと比べて短命でした。予想通り、肥満症は寿命の短縮に関与したということです。

 

そして驚くべきことに、内臓脂肪を切除した第3グループのマウスは第1グループと同様に長生きしたのです。

 

皮下脂肪を切除した第4グループのマウスは第2グループのマウスと同様に短命でした。

 

つまり、高カロリー食を摂って肥満したかどうかではなく、内臓脂肪の有無が寿命に影響を与えたということです。内臓脂肪に蓄積した脂肪細胞から分泌される炎症性サイトカインが寿命の短縮に影響を与えたと考えられます。

 

それほど、内臓脂肪が蓄積することは重要な意味を持つということです。

 

もちろん、これはマウスでの実験結果であり、そのまま人間に当てはめることはできないでしょう。しかし、内臓脂肪を増やさないようにすることは、人間にとっても単にダイエットの意味だけではなく、慢性疾患にかからず、健康に長生きするためにいかに重要かということが分かっていただけたかと思います。

 

では、内臓肥満を防ぎ、脂肪細胞の悪玉化を防ぐためにはどうすればいいのかについて考えていきましょう。

医療法人全人会 小西統合医療内科 院長 総合内科専門医
医学博士

京都大学医学部卒業。天理よろづ相談所病院・京都大学消化器内科などで内科全般を研修し、消化器内科を専門とする。内科医として約20年病院勤務。現在は、小西統合医療内科院長として、機能性医学を柱とした統合医療の立場から診療に携わっている。

【小西統合医療内科HP:https://www.konishi-clinic.com/

機能性医学に関する情報をFBなどで発信しています。
下のリンク集をご参照ください。
https://lit.link/doctorKonishi

著者紹介

株式会社イームス 代表取締役社長
メタジェニックス株式会社 取締役
株式会社MSS 製品開発最高責任者
大阪大学大学院医学系研究科 研究員 

欧米で生化学と栄養学を学び、製品の研究開発並びに医療コンサルティング会社を立ち上げる。

2009年に機能性医学をいち早く日本に紹介し、現在は日本の医療従事者へのソリューション提供や講演活動に従事している。

著者紹介

連載自己治癒力を高めるための機能性医学

自己治癒力を高める医療 実践編

自己治癒力を高める医療 実践編

小西 康弘

創元社

病気や症状は突然現れるのではなく、それまでの過程に、自己治癒力を低下させるさまざまな原因が潜んでいます。だからこそ、対症療法ではなく根本原因にまで遡って治療を行うことが重要なのです。 本書では、全人的な治癒を…

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