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意見を言った部下に対してやってはいけないこと
■心理的安全性を脅かす上司の口癖
心理的安全性とは、組織行動学の専門家であるエドモンドソンが1999年に定義した心理学用語で、「チームの他のメンバーが自分の発言を拒絶したり、罰したりしないと確信できる状態」のことです。
近年、よく耳にするようになりましたが、いくら実績がある優秀な人でも上司を前に堂々と反対意見を言うのは難しいと感じている人はまだまだ多いでしょう。
この心理的安全性の高い職場を作るために上司がしてはいけないことがあります。それは、意見を言った部下に対して「でも・だが・だけど」などの否定的な接続詞で返答することです。
あなたやチームのことを信頼して、勇気を持って発言したにもかかわらず、上司のあなたが頭から否定すると、せっかくの関係にヒビが入ってしまいます。
そのようなことが続くと、部下は何を言っても意味がないと感じ、萎縮して「黙っておいたほうがいい」と今後は何も言わなくなってしまいます。
多少的外れに感じても、きっと部下なりにそう感じた根拠はあるはずです。
心の中では「いやあ、この意見はちょっと違うな」と思ったとしても、まずは
「なるほど」「そうか」と受け止め、
「どうしてそう思ったの?」
「もう少し詳しく説明してほしい」
と、意見の背景を掘り下げていきましょう。そうすることで、部下の意図がつかめるだけでなく、場合によっては新たな視点が生まれることもあるでしょう。
人は、自分の存在が認められることで相手を信頼し、その結果として、相手と共有する場(職場)が心理的安全性のある場所だと感じます。
上司が部下の意見に耳を傾ける姿勢を示すことで、部下は自分の存在が認められていると実感することができるのです。
たしかに、部下を正しい方向に導くことは上司の大切な仕事の1つです。
しかし、あなたの何気ないひと言でせっかくの職場のよい雰囲気が台なしになってしまうこともあります。
ついつい「でも」から会話を始めてしまう方は、意識的に直していきましょう。
部下にとって上司は、想像以上に影響力の大きな存在です。悪気なく言ったひと言で存在まで否定されたと感じさせないよう、心に留めておいてくださいね。
心理的安全性のある職場づくりをする上で、もう1つ留意したいのは、「俺の時代はこうだった」は通用しないということです。
上司と部下は育ってきた時代が異なることもあり、意識のズレが生じている場合が少なくありません。
あなたが若かった頃は、上司は「背中を見て仕事を覚えろ」という人たちが大半だったかもしれませんが、今はそれでは通用しない時代です。
まずは我が身を振り返り、業務が円滑に進むよう、心理的安全性のある職場づくりを心掛けてみましょう。部下の見え方が変わってくるかもしれませんよ。