実務経験の乏しい看護師は役に立たない
多くの24時間看護師常駐ホームでは、次のような現象がまかり通っているはずです。
それは、派遣看護師ばかりだということです。老人ホームの場合、昼間帯は常勤の看護師が配置されていることが多いのですが、夜勤帯はというと、そうはいきません。つまり、夜勤帯の看護師の多くは派遣看護師なのです。しかも、私が問題だと思っているのは、日替わりの派遣看護師のケースです。ここは大問題だと思っています。
私は、こんなケースを何度も目撃したことがあります。
夜間帯、急に具合の悪い入居者が出現しました。介護職員は、速やかに夜勤看護師に伝え、対応を依頼しましたが、その看護師は、こともあろうに、ほかの介護職員にどうすればよいかと聞くありさまでした。理由を尋ねると、自分は今日だけの派遣看護師なので、当該入居者の普段の状態がまったくわからない、と。したがって、何をどうすればよいのかもわからないので、普段から面倒を見ている介護職員から意見を聞きたい、というものでした。
また、このようなケースもありました。急変時、看護師に対応を依頼したところ「看護師資格はあるが、近所のクリニックでしか勤務したことがないので、どうしてよいかわからない」。
老人ホームの現場を見ていると、こんなことは日常茶飯事です。つまり、いくら看護師の資格があったとしても、実務経験がない看護師はたくさんいるということです。しかも、多くの24時間看護師常駐を標榜している老人ホームの中には、このような派遣看護師で運営をしているホームもたくさんあるということです。
私の経験で言うなら、実務経験が乏とぼしい看護師よりも、ベテランの介護職員のほうが、老人ホームの緊急事態の場合は、大いに役に立つと思います。
私は、このような経験から入居相談者に対し、次のような話をすることにしています。医療に対する信仰心を捨てなさい、とは言いません。しかし、医療に対する信仰心があるのであれば、次の話をよく聞いてください、と。「夜間時に母親が急変したら大変です。だから看護師が夜間にいると安心です」というケースの場合、多くの老人ホームでは、夜間帯に入居者が急変した場合は、救急車を呼んで病院に行きますよ。たんに、看護師資格があるだけの者がいるだけでは、何もできません。
したがって、このテーマで考えた場合、費用対効果はゼロに等しいので、普通の老人ホームで十分です。費用が安くなった分、毎月、おいしい食事に、おじいちゃんを連れて出かけたほうが良いのではないですか、と。
小嶋 勝利
株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役