本州の競合メーカー、北海道出店ラッシュの裏で…地元企業の従業員が「やる気を失った」意外な理由

本州の競合メーカー、北海道出店ラッシュの裏で…地元企業の従業員が「やる気を失った」意外な理由

2000年、本州の菓子メーカーは次々北海道へと進出し、目覚ましい成果をあげていました。経営の根幹を支えたバターピーナッツ事業からの撤退で、一度は勢いがそがれた地元の豆菓子店も、新興勢力に対抗すべく、全力投球しています。しかし、赤字脱却後も従業員の表情には覇気がなく、原因が探せない社長は焦りますが…。

「自分たちが作ったもの」という実感が湧かず…

原因が分かったのは、「どこでも会議室の取り組み」を始めて1カ月ほど経った時のことでした。工場内で豆職人の担当者と雑談していた時に、こんなことを言われたのです。

 

「社長、我々が作っている豆菓子って、名前が出ませんよね」

 

「名前ですか。まあ、そうですね。問屋さんやメーカーさん向けの仕事ですから、我が社の豆菓子であると知っている人はかなり少ないと思います」

 

「そこって、どうにか変えられませんか」

 

「変える、とは、どういうことですか」

 

「実は昨夜、子どもに『お父さんが作っているお菓子はどこに売っているの』と聞かれたのです。子どもは私が菓子作りの仕事をしていることを知っています。毎日忙しく働いていることも、たまに遅く帰るのも仕事があるからだと知っています。しかし、仕事の成果は子どもには見えません。OEMといっても分かるはずもなく、商品名で説明ができれば、私はもちろんうれしいですし、子どもらもうれしいだろうなと思ったのです」

 

この話を聞いて、私は衝撃を受けました。この日のこの瞬間まで、私は「仕事がたくさんあればいい」「忙しいことは良いこと」と思っていました。経営者としては、それは間違いではありません。

 

仕事を増やし、売り上げを増やしていくことが経営者に求められる第一の条件であるはずだからです。特に私は、二代目としてのプレッシャーを感じていましたし、経営を引き継いでから2度も赤字を出しているため、仕事が増えているというだけで現状に満足していました。しかし、従業員は満足していません。

 

ものづくりの仕事は、完成品ができることによって満足感が生まれます。メーカー向けのOEMも立派なものづくりですが、「自分たちが作ったもの」という実感が湧かず、それが従業員のモチベーションを低下させる原因になっていたのです。

 

 

池田 光司

池田食品株式会社 代表取締役社長

 

 

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