「小麦アレルギー」もグルテン関連障害の一つだが…
■セリアック病、非セリアック性グルテン・小麦過敏症との違いは?
では一般的にもよく耳にする「小麦アレルギー」とはどのような病態なのでしょうか。
「小麦アレルギー」も、グルテンなどでアレルギー症状が起こるもので、グルテン・小麦関連障害の一つです。
セリアック病のような自己免疫反応によるものではなく、即時型食物アレルギーの一つです。花粉症とかダニアレルギーといった特定の抗原に対するアレルギーと同じで、その原因がたまたま小麦であったということです。
小麦や大麦、ライ麦、オーツ麦などを摂取すると、それらに含まれるタンパク質を異物として攻撃する抗体(IgE)が作られ、数時間以内に、腫れやかゆみ、じんましんといった皮膚症状、気管支閉塞(へいそく)、鼻炎といった呼吸器症状などを示し、重症の場合にはアナフィラキシーショックを起こすこともあります。基本的に出る症状は「アレルギー症状」であることが、セリアック病や非セリアック性グルテン・小麦過敏症と異なると言えます。
小麦アレルギーの特徴は、グルテンや小麦に対してのIgE抗体が出ていることです。発症率は0.2%程度です。
今回紹介したグルテン関連障害の3つの病態を比較した表を図表3に示します。
図表3で非セリアック性グルテン・小麦過敏症の50%にセリアック病で特徴的な、HLA遺伝タイプを持つものがあり、自己抗体が陰性であることで非セリアックと診断されていますが、セリアック病との境界病変である可能性はあります。
小麦以外でも同じような過敏症症状が起こる場合がある
ここまでで小麦を食べることで起こるさまざまな不調について詳しく見てきました。
この中で、最も問題になるのは二つ目にお話しした非セリアック性グルテン・小麦過敏症でしょう。日本でもある一定の数の患者さんが存在すると考えられます。この病態の何が問題かと言うと、明らかな「アレルギー症状」ではない症状が起こるため、なかなか小麦が原因と気づかないことです。
そして、このような食材による体調不良は小麦に限ったことではありません。最近では、即時型のアレルギーと区別して「遅延型食物アレルギー」という病名で診断されることがあります。病態としては、腸管のバリア機能が低下したことによる免疫の過剰反応なのです。
それでは、具体的に症例を見ていきましょう。
症例1ではゾヌリンの値が高くなっているということから、リーキーガットの状態であると分かります。同時に、遅延型フードアレルギー検査でさまざまな食材に対して中程度以上の反応が出ています。つまり、同時に免疫過剰な状態もあるということです。
患者さんを診察していて、ゾヌリンまでが高くなっている人は少ないです。
症例2ではゾヌリンは高くなっていません。厳密な意味では、リーキーガットはないということになります。しかし、遅延型フードアレルギー検査で、さまざまな食材に中程度の反応が出ています。つまり、リーキーガットはあまり認めないが、それ以外のバリア機能の低下があり、免疫反応の過剰状態があるということです。
自験例で、ゾヌリンと遅延型フードアレルギー検査を同時に調べた患者さんの場合、ゾヌリンは正常であることが多く、症例1はむしろ例外的です。
これは日本ではセリアック病が少ないこととも関連するかもしれません。リーキーガットがない状態でも、腸管粘液の分泌量が減少し、バリア機能が低下すると、遅延型のアレルギー反応は起こるということが大切です。
今後、他施設でもっと多くの症例を集めて詳しく検討する必要があると思います。
厳密な意味でゾヌリン値が正常でリーキーガットがないと考えられる場合でも、腸管免疫が過剰に働いている状態であれば、遅延型アレルギーが起こり、さまざまな体調不良の原因になります。この場合は図表2で示した腸内フローラのバランスや、粘液、分泌型免疫グロブリンの量や機能が低下していることが原因であると考えられます。