(※写真はイメージです/PIXTA)

小麦を筆頭に、特定の食材を食べた後、しばらくしてから身体がだるくなる、頭痛や下痢、腹痛などの症状が起こる…そんな「遅延型食物アレルギー」や「隠れ食物アレルギー」と呼ばれる病態に悩む人が増えています。特定の食材で体調を崩す人はそれらを一切食べてはいけないのでしょうか? また、特に体調を崩すことのない健康な人であっても、これらの食材を避けたほうがいいのでしょうか。※本連載は、小西統合医療内科院長・小西康弘医師による書き下ろしです。今回は藤井祐介氏と共同執筆しています。

【関連記事】アレルギーじゃないのに「食事で体調が悪くなる人」の体内では、何が起こっているのか?

特定の食材で体調を崩す原因は“食材そのもの”ではない

小麦や他の特定の食材を食べると体調が悪くなる人がいます。これは、反応する食材自体が問題なのではなく、腸管の免疫反応が過剰状態であることが関係しています。そしてそれは、マイクロバイオータ(ここでは腸内細菌叢〔腸内フローラ〕を指します)のバランスが崩れた「ディスバイオーシス」という状態を起こすことによって、腸管のバリア機能が低下していることが原因です。前回の記事ではこの状態を「広義のリーキーガット」と定義しました。

 

「広義のリーキーガット」では、腸管のバリア機能が低下することによって、腸管の内腔にあるさまざまな食材が、腸管の免疫細胞を刺激し、さまざまな不調を起こすようになります。そして、「腸管ディスバイオーシス」と「リーキーガット症候群」とは密接に関係しているという話をしました。

 

狭義のリーキーガット=従来のリーキーガットの定義だが、日本では、厳密な意味でこの条件を満たす症例は少ないと思われる。この基準を満たさないものはリーキーガットではないと判断されてしまうため、腸内環境の乱れから生じる諸症状を見逃しかねない。
【図表】 狭義のリーキーガット=従来のリーキーガットの定義だが、日本では、厳密な意味でこの条件を満たす症例は少ないと思われる。この基準を満たさないものはリーキーガットではないと判断されてしまうため、腸内環境の乱れから生じる諸症状を見逃しかねない。

 

では、このような人は一生その食材を食べることができないのでしょうか。あるいは食材で体調が悪くならない人もこれらの食材を避けたほうがいいのでしょうか。今回は、そのことについて考えていきましょう。

 

■もはや「腸管ディスバイオーシスが関係していない疾患」はないに等しい

これまでの連載記事の中ではいろいろな慢性疾患が、私たちの腸管内に住むマイクロバイオータと関係しているという話をしてきました。過敏性腸症候群などおなかの症状を示す疾患だけではなく、花粉症や気管支ぜんそく、アトピー性皮膚炎といったアレルギー性疾患、あるいは動脈硬化や糖尿病の原因となる肥満症、さらにはうつ病や自閉症などの精神的な疾患などについてはこれまでの記事で紹介しました。

 

現在では、上記の慢性疾患以外でもほとんどの疾患で、腸管ディスバイオーシスが関係していないものはないと言ってもいいと考えられています。

 

これは、決して「マイクロバイオータびいき」で言っているのではなく、検査技術の進歩によりマイクロバイオータの遺伝子解析が進んできたことで新たに分かってきた事実です。この分野の研究が急速に進み、多くのエビデンスが積み上げられています。

 

日本でも、最近になってようやく多くの研究会や全国的な学会でもマイクロバイオータと慢性疾患との関係について討議するセッションが開催されるようになってきています。数年前までは、マイクロバイオータとかリーキーガット症候群とかほとんど聞いたことがなかったことと比べると隔世の感があります。

 

とはいえ、腸内環境を整えればすべての病気が魔法のように治るとか、極端なことを言っているわけではありません。慢性疾患が発症する要因は決して単純ではありませんが、マイクロバイオータは無視することができない重要な要因の一つであるということです。そして、これまでは根本的な治療結果が望めなかったいくつかの疾患でも、マイクロバイオータの改善を行うと治療効果が格段に上がるという実証例がたくさん積み上げられてきています。

 

今回テーマにしているグルテン関連障害やそれ以外の食材に対する「遅延型アレルギー」も当然この部類に含まれます。どちらの疾患も標準的な医療ではまだあまり認知されていません。しかし、原因のはっきりとしない不定愁訴的な症状が起こっている場合、実は、頻回に摂っている小麦やその他の食材が原因で起こっている場合があるのです。

 

まだ読まれていない方は、ぜひこちらの記事を併せてお読みください(【⇒関連記事:アレルギーじゃないのに「食事で体調が悪くなる人」の体内では、何が起こっているのか?】)。

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自己治癒力を高める医療 実践編

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