「セリアック病」とは?
セリアック病は、小麦や大麦、ライ麦に含まれるタンパク質・グルテンに対する遺伝性の自己免疫疾患です。グルテンに対して腸管免疫が過剰反応し、自分自身の腸管粘膜のタンパク質成分に対しての抗体ができ腸管粘膜を攻撃します。その結果、小腸粘膜の萎縮、栄養の吸収不良を起こします。
その結果、患者の血液中にはゾヌリンという物質が高濃度認められるようになります。ゾヌリンというのは腸管上皮細胞同士の繋ぎ目(タイトジャンクション、以下TJ)の密着度合いを調節しているタンパク質です。ゾヌリンの血中濃度が高くなると、TJを緩ませる作用があります。
ゾヌリンの血中濃度が高いということは、TJに隙間ができ、通常であれば通過できないような大きな分子が、その隙間を通って体内に入ってくるようになっているということです。この状態を「リーキーガット症候群」と言います。セリアック病に限らず、ゾヌリンが高くなるような状態ではリーキーガットが起こります。
■「リーキーガット」について
リーキーガットが起こって、細胞と細胞との間(TJ)がスカスカになると、腸管内にある未消化のタンパク質や環境毒素、悪玉菌から放出された毒素が体内に流れ込み、身体に炎症を起こし、さまざまな不調の原因となります。リーキーガットが起こっているかどうかは、ゾヌリンが高いかどうかを調べる必要があります。
リーキーガットを起こす原因は、小麦などの未消化な食物だけではなく、環境毒素や薬物、病原菌や精神的なストレスなどもあります。リーキーガット症候群を起こすと、腸管のバリア機能が低下し、体内にさまざまな炎症性物質が入り込み、慢性疾患の原因となることが分かってきています。
■ただし日本人の場合、セリアック病の可能性はかなり低い
セリアック病の発症には、遺伝的要因が関係しています。免疫細胞の遺伝的なサブタイプを示すHLA(ヒト白血球抗原)というものがHLA-DQ2, 8の人しか発症しません。つまり、それ以外はセリアック病になる可能性は極めて低くなります。日本人ではこのサブタイプを持っている人は非常に少ないことが分かっています。
小麦を主食とする欧米諸国ではセリアック病の有病率が1‐2%程度とされますが、日本人における有病率は0.05%程度であると考えられます。つまり、小麦を食べた後に体調が悪くなる人でも、日本人の場合はセリアック病である可能性は非常に低いということです。
細胞と細胞との間を繋ぐTJに対する自己抗体が検出されるということが大きな鑑別点で、血清学的検査で自己抗体が証明されることが診断根拠となります。十二指腸粘膜に萎縮が認められることも大きな特徴です。
以上から、セリアック病は免疫細胞の遺伝タイプが特定のHLA-DQ2, 8であることと、セリアック病に特徴的な自己抗体が出ていないかどうかで診断することができます。この診断基準を満たさない場合は、次の「非セリアック性グルテン・小麦過敏症」の可能性があります。