赤字に苦しむ中小病院にイノベーションをもたらす可能性を秘めた「電子カルテ」。なかには年間約7,000万円のコストカットに成功した病院もあると、株式会社アリオンシステム代表取締役社長の山本篤憲氏はいいます。もっとも「カルテの電子化」には厚生労働省が定めたいくつかのルールが存在するため、電子カルテ導入にあたって求められる3つの原則をみていきましょう。

電子カルテのコスト削減効果

電子カルテによって年間約7,000万円のコストカットに成功

神戸市立医療センター中央市民病院は、病床数768床で、30を超える診療科を持つ神戸市域の基幹病院です。年間退院患者は2万人以上、外来患者は毎日2000人ほど来院しています。結論となる電子カルテ化のコスト削減効果を同病院では、年間約6,960万円にも上ると算出しています。

 

出典:電子カルテ導入に向けた紙カルテPDF化の実際と成果
[図表1]処方箋用量超過アラート 出典:電子カルテ導入に向けた紙カルテPDF化の実際と成果

 

単純に比例して考えることはできませんが、200床規模の病院で導入しても、かなりのインパクトが期待できることは間違いありません。特に、カルテ管理業務の外部への業務委託コストをカットできたことが、大きな効果を呼んでいます。

 

この試算には入っていませんが、患者本人から診療情報などの開示請求があれば、患者に必要な書類をコピーする費用として、1枚につき数十円~100円程度かかります。入院期間や外来通院期間が⻑ければ⻑いほど、その枚数と費用は増えるわけですが、これも電子カルテを導入していない病院では必須の費用となります。

 

それが電子カルテを導入すると、PDF形式などでCD1枚にまとめてコピーして渡すことも可能です。このような費用のかさみやすい部分をカットできるため、患者への負担を求める必要がなくなります。これらの作業に対応する職員の負担も減らすことが可能となります。

 

加えて、カルテ庫を別の用途に使えるようになったというプラス効果も、この数字には含まれていません。カルテ保管庫だったスペースを診療で使ったり、従業員の働きやすさを支援するための場所に使うことができたら、従業員満足度や収益にプラスとなり経営改善の効果はさらに大きなものとなるはずです。

 

 

山本 篤憲

株式会社アリオンシステム

代表取締役社長

 

※本連載は、山本篤憲氏の著書『病院を発展・黒字化させる 電子カルテイノベーション』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

病院を発展・黒字化させる 電子カルテイノベーション

病院を発展・黒字化させる 電子カルテイノベーション

山本 篤憲

幻冬舎メディアコンサルティング

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