「差別化による収益増」の方法は限られている
診療報酬という仕組みによって、日本では地域差を感じることなく医療サービスを受けることができています。逆にいえば、この仕組みがある以上、医療機関は医療サービスに自由な料金設定をすることができません。
そのため収益率を改善したいなら、経営継続に必要な利益を計算し、それを満たす数の患者に来院してもらう必要があります。
外観がすすけて、どう見てもCTやMRIといったテレビの医療ドラマでもよく目にする設備などとは縁もゆかりもなさそうな病院と、見るからに新しく入り口には専任の受付担当がいる大病院とでは、患者はどちらを選ぶかといえば答えは後者がほとんどです。
自分の不調を治療してもらうのに、CTやMRIによる画像診断を受ける機会はそうはありません。それでもやはり体調を崩した際の不安な気持ちがそうさせるのか、患者はとにかく大きく、新しい設備を導入していそうな医療機関を探し、多少遠くてもそこへ足を運びます。
継続して集患をし続けなければならない医療機関は、こうした患者の心理をよく理解しています。集患の基本は、患者ニーズに寄り添うことです。
そこで、患者が関心をもってくれる可能性があるのなら、数千万、億単位のお金を投資して最新設備を導入するという選択をしてしまうのです。
風邪など比較的軽い症状であれば診療所へ出かけます。診療所で診てもらった結果、対応が難しい疾患だと分かれば地域の中核病院へ紹介状を書いてもらい、そこでより高度な医療を受けます。こうした役割分担が地域のなかで確立しているなら、すべての病院がCTやMRIの設備をもつ必要のないことは明らかです。
しかし、「最新設備がそろっている病院が安心できる良い病院」という認識が世間に先行しています。設備をもたない病院があってもいいという認識が広く共有されるまでには、まだ時間がかかると思います。
また、設備投資にはお金がかかります。その金額を診療報酬で回収できたとしても医療機器にはメンテナンスが必要ですから、さらに維持費もかかります。集患への危機意識から焦って巨額の投資を行ったのち、かえって経営が苦しくなるという例も少なくないのです。
こうした設備投資はやむを得ないと考える場合であっても、別の面からなんらかの方法でコストをきちんと減らしていかなければなりません。設備に巨費を投じるのにほかの支出は今までどおりということでは、収支のバランスはすぐに悪化してしまいます。
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