会社との関わりは事業継承を期に終わらせる
無事に短期間で事業継承を行えたとします。その後の会社との関わり方は、人によってさまざまでしょう。後見型や補佐官型の事業継承を行ったとすれば、継承後も半年から数年は、以前と同じように会社に出勤し、関わりを持ち続けることもあるかもしれません。
しかし個人的には、会社にはできるだけ関わりを持たないことをお勧めします。普段は出社せず、業務を見回るようなことも控え、相談を受けた時のみ腰を上げるような関係が理想的です。
後継者からすれば、前経営者が会社と関わり続け、影響を及ぼし続けるなら「そもそも事業継承したことに意味があるのか」と疑問を感じます。経営判断に口を出されればいい気分はしませんし、その通りに動いてばかりではいつまでたっても自信が持てません。
特に親子間の継承で顕著ですが、経営者はたとえ口出しをしないと決めていても、どうしても口をはさみたくなってしまうものです。なぜなら、後継者は自分と比べてまだまだ社長業の経験が浅いため、誤りや非効率が目につくからです。
しかしこれは、例えるなら高校野球に無理やりプロ野球選手が出場するようなものです。確かにその場の勝利は簡単につかめますが、プロの力を借り続けて甲子園を優勝したチームから、果たしてプロ野球選手が生まれるでしょうか。
自らの努力で勝利をつかみ取り、時には敗北してくやし涙を流し、それをばねにすることで成長していくのは、経営の道も同じです。もしあなたが会社に関わりを持っていると、敗北するとわかっているようなことがあれば、口を出さずにはいられないはずです。しかしそれをやってしまっては、後継者は経営者として成長できません。
だからこそ、できるだけ関わりを持たないほうがいいのです。事業継承を、自らの会社との関わりの終点と位置づけ、きっちり引き継いで引退すれば、経営という重圧から解放されます。次の楽しみを見つけてはどうでしょう。
事業継承は経営者として生きた証しを刻む作業
団塊の世代の経営者で多いのは「仕事が趣味」といって、没頭してきたタイプです。もし事業継承後にどうしても経営がやりたくなったら、また自分で会社を立ち上げ、一からチャレンジすればいいのです。
人は、いつかは死を迎えます。しかし事業には、決まった寿命はありません。事業継承を境に、何度でも若返り、環境の変化に適応し、次の時代を生きることができます。事業継承を成功させ、企業が永続的に続いていけば、あなたの思いもまた、世代を超えて受け継がれていくことになります。そう考えれば、事業継承は、あなたが経営者としてこの世に生きた証しを刻む作業に他ならないのです。