前回は、円滑な事業承継のために必要な「準備期間」を説明しました。今回は、中小企業経営者の多くが「親族内承継」を選択する理由を見ていきます。

若いうちから後継者の育成が可能

本書『たった半年で次期社長を育てる方法』の後半では後継者の選び方についても述べていますが、まずは後継者選びの基本となる知識を押さえておきましょう。

 

中小企業の場合、後継者としてまず頭に浮かぶのが、子どもや兄弟などへの親族内承継であると思います。実際に、親族内承継はもっとも一般的な方法であるといえ、特に子どもに対する承継が目立っています。『中小企業白書2013年版』のデータによると、小規模事業者の後継者は、個人の場合約85%、法人でも約60%以上が、わが子に会社をゆだねるといいます。

 

子どもに承継するメリットとしては、大きく三つが挙げられます。

 

①若いうちから後継者の育成ができる

 

経営者の子どもというのは、小さい頃から親の働く姿を見ながら育ってきています。私もそうですが、経営者であった親を尊敬し、その影響で自らも経営の道に進むと決めた人はたくさんいるでしょう。それを経営者の側から捉えるなら、「もし自分の跡を継がせれば、自分と同じように愛着を持って家業を営み、会社を存続させることを使命として奮闘してくれるはず」という期待を抱くことができます。そして、わが子を後継者にしようと早くから決めていれば、将来の社長候補として教育もしやすく、中長期での育成計画も立てやすくなります。

株式や財産を集中させやすく、周囲の同意も得やすい

②株式や財産を集中しやすい

 

経営者の子どもは「法定相続人」であるため最終的には相続によって財産を移転することができます。事業に必要な財産や株式などの資本を分散することなく引き継げるため、子どもは経営権をしっかり握りやすくなります。

 

③周囲の同意が比較的得やすい

 

中小企業においては、経営者の親族が新たに会社を継ぐというのは普通のことです。社内外の関係者もそれを理解しており、まったく知らない第三者がいきなりあらわれて会社を引き継ぐよりも、親族が跡継ぎであるほうが心情的に受け入れやすくなります。こうして周囲からの同意を得やすいため、社内での跡目争いが起きる可能性も下がります。

 

以上のような理由もあり、世襲による世代交代は、現在でも頻繁に行われています。

 

ただ、一方で子どもを後継者に据えるデメリットもまたあることは、知っておかねばなりません。

本連載は、2015年10月25日刊行の書籍『たった半年で次期社長を育てる方法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

たった半年で次期社長を育てる方法

たった半年で次期社長を育てる方法

和田 哲幸

幻冬舎メディアコンサルティング

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