前回は、事業承継を終えた経営者が、その後会社とどう関わっていくべきかを説明しました。今回は、事業承継の対策をしないと、どのようなリスクがあるのかを見ていきましょう。

後継者が経営権を掌握できず、苦しい立場に・・・

そもそもなぜ事業承継への対策が必要なのか。その理由は、「もし対策をしなかったらどのようなリスクがあるのか」と逆説的に考えることで理解できるはずです。

 

●経営権が分散し、経営が不安定になる

 

親族内承継で特に目立つのが、このリスクです。自分の子どもたちにはできるだけ仲よく財産を継いでもらいたいと思う親心はよく理解できますが、だからといって、嫁いで専業主婦になっているような娘など会社との関わりがない人にまで自社株などを均等に分配してしまうと、後継者が非常に難しい立場に追い込まれることがしばしばあります。

 

なぜなら、経営権もまた分散してしまい、後継者が経営権を完全に掌握できないからです。

 

たとえ優れた後継者がいたとしても、その他の親族の結託によって社長が解任されてしまっては意味がありません。また、そうして「平等」が発端となったような争いが起きると経営が停滞し、業績が悪化する恐れがあります。

 

このようなリスクを回避するためには、事業承継までに後継者を絞り、自分の意思を託した後、後継者をはっきりと名指しして、後継者以外の親族の理解を得ておくことです。

新社長と既存社員との間に「軋轢」が生じることも

●新体制の発足が原因で、会社が分裂する

 

後継者に代替わりする際の準備が不十分なことで起こる代表的なリスクのひとつです。老舗企業であれば特に、その経営者は社内外から絶対的な信用を得ているものです。それは時に、法人に対する信頼よりも経営者個人に対する信頼が勝ります。

 

個人への尊敬の念というのは承継することはできませんから、後継者が新たに信頼を築いていくしかないのですが、周囲にまだまだ新社長として認められていないうちから事業改革に着手したり、先代の路線を引き継がなかったりすれば、古参社員や従業員との軋轢が生じるリスクが出てきます。

 

そこで抵抗勢力が出来上がってしまえば、後継者の経営にとっての大きなマイナス要因になり、最悪の場合、会社が分裂してしまうでしょう。

 

経営者としては、事業承継の段階で、後継者が社内外で認めてもらえるよう手を打っておく必要があります。

本連載は、2015年10月25日刊行の書籍『たった半年で次期社長を育てる方法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

たった半年で次期社長を育てる方法

たった半年で次期社長を育てる方法

和田 哲幸

幻冬舎メディアコンサルティング

中小企業は今後10年間、本格的な代替わりの時期を迎えます。 帝国データバンクによると、日本の社長の平均年齢は2013年で58.9歳、1990年と比べて約5歳上昇しました。今後こうした社長たちが引退適齢期に突入します。もっと平…

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