子どもが「経営者としての資質」を持たないケースも
前回の続きです。
まず、子どもに経営者としての資質がないケースです。これは、例えば社内外からの信頼の厚い古株の社員がおり、明らかにそういった人材に引き継がせたほうが企業が成長するのではないか、と思われるような場合も含みます。わが子可愛さからそこに目をつぶり、無理に子どもを経営者の椅子に座らせても、後々苦労するのは本人です。
兄弟の場合、どちらに継がせるかといった悩みも生じるでしょう。弟のほうが明らかに経営センスがあるのに、兄の面子を考えれば弟を後継者に据えにくいなど、親だからこそ頭を抱える問題も出てきがちです。その他、後継者に選ばれなかった親族や古参社員への配慮が必要になってきます。
なお、親族内承継では、経営者の兄弟や甥、娘婿などに会社を引き継ぐという選択肢もありますが、直系の親族以外に会社を引き継いだ場合には、世代を経るごとに株式は分散しやすくなります。承継時に、自社株式の分配比率について、経営者を中心に親族間で協議しておく必要があります。
誰しも「自分の好きな道」を選ぶのが当然の時代に
中小企業の事業承継で圧倒的な割合を占める世襲ですが、以前に比べればその数は減少傾向にあります。少子化の影響も多少あるかもしれませんが、それよりも現代は「個」を重んじる時代であることが大きいかもしれません。昔は、長男は家を継ぐことが風習として当たり前に行われていましたが、今では誰もが自分の好きな道を選び取ることが当然の権利とみなされているからです。
子どもが親の会社を継がない理由はさまざまでしょうが、『中小企業白書2013』によれば、小規模事業者の廃業理由として、個人は60%以上、法人でも50%以上が後継者難であり、その半数が「子どもに継ぐ意思がない」「子どもがいない」というものでした。
ここで、親と子の間柄であっても世襲が行われない理由として、私がよく聞くものを挙げておきます。
[親の理由]
●子どもの人生を尊重したい
●都会に住んでいる子に、戻って来いとはいえない
●自分と同じ苦労をさせたくない
●会社の借金を継がせたくない
[子の理由]
●家業や会社の経営にまったく興味がない
●公務員などのような安定した生活をしたい
●大きな責任を背負いたくはない・家業の先行きに可能性が感じられない
このように、子どもがいるからといって必ずしも後継者になるわけではなく、中には会社をたたむ選択をする会社もあるのです。