「国民皆保険制度」が集患を難しくしている
収益を考えていくうえで前提となるのが国民皆保険制度、診療報酬です。
1961年に導入されたこの制度のおかげで、私たちは懐具合を気にし過ぎることなく必要な医療を受けることができています。患者のためを貫く病院側にとっても、金銭事情から受診が難しいという患者が減るこの制度は歓迎すべきものでした。しかしそれが同時に、医師などの長時間過重労働の一因となっているジレンマも存在しています。
同じ病気で受診した場合、全国どこでもほぼ同じ料金で治療が受けられるということは、裏返せば医療機関側では一部を除いて任意の価格設定ができないということを意味します。具体的には、標準医療という患者数が多く収益の源泉になりやすい部分について、価格設定に足枷が生まれてしまうのです。
こうした事情から、医療を継続提供するために必要な売上を得るためには、病院はなるべく多くの患者に来院してもらわなければなりません。
ラーメン屋なら、同じクオリティのラーメンを一杯800円で売ることも1500円で売ることもできますが、客単価を調整して収益性を改善するということが病院経営ではできません。医療の質を高めて、その分を価格に上乗せするということもできません。
大きな病院のような総合力も打ち出しづらく、専門病院のような尖り方も難しい中小病院は特に没個性的になりがちで、集患に苦労することになるのです。
「外来が多ければいい」というわけではない
外来に人が多いという事実は、そのまま病院収益に直結しているようにも見えます。しかし、そう簡単にはいえないのが病院経営の一筋縄ではいかないところです。
大きな病院でも「患者が多いことはウェルカム」という図式が成り立ちますが、それは必ずしも外来が多ければいい、というわけではありません。外来が混みあっていればその病院は儲かっている、という単純な話ではないのです。
外来で患者を受け入れるにあたり、医師は朝からその準備に追われます。外来の時間が始まれば、患者の診断、処方を第一にしながら、手早くさばいていかなければなりません。
患者側には、あまり話を聞いてくれなかったという印象を与えかねないやり方ではありますが、それは待合室で待っている患者にも平等に医療を提供しなければならないやむを得ない事情があるからです。
実際、診療の時間は短くてもしっかり診てもらえたという安心感を与える工夫や気遣いに、心を配っている医師も少なくありません。
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