配偶者など家族からの強い反対
④今の仕事からの逃避
今の仕事がつらいので転職したい、職場の上司と折り合いが悪いので辞めたい、忙し過ぎるのでペースダウンしたいなどの転職理由も、企業側からは嫌われます。
地方にある会社だからといって楽な仕事は一つもありません。むしろ地方には事業承継や業態転換を試行錯誤している企業も多いため、優秀な戦力を求めています。できれば一人で二人分、三人分の働きをしてくれるコストパフォーマンスの高い人材が欲しいのです。
地方中小企業がUターン転職者を歓迎し積極採用している理由は、都会の企業で腕とセンスを磨いた人材なら、新卒採用で何人も採用するより即戦力になってくれると期待するからです。
それを地方に転職すればのんびりできると思われては、企業側も期待外れです。「うちの会社のために汗を流す覚悟のない人に来てもらっては困る」と、不採用にするのは当然です。
ちなみに私の経験から言えることですが、特に都会の仕事で疲れて地元に帰って来た独身者は、単身で身軽なこともあり、しばらく地元にいて元気になると再び都会へと逆Uターンして行くケースが多いです。このパターンは一時的な羽休めとしてのUターン転職であり、成功といえるのかというと疑問が残ります。
⑤配偶者など家族からの強い反対
自分はUターンを希望していても家族が反対するケースもあります。意見の食い違いや価値観のぶつかり合いが起こりやすい夫婦の組み合わせとしては、一方が地方出身者で、もう一方が都会出身者である場合です。
典型的なケースを挙げると、夫は地方出身で、東京の大学に進学し都内で就職しました。妻は生まれも育ちも都内で小学校から大学まで私立の一貫校、結婚後も仕事を続けていました。二人は大学のサークルで知り合って結婚し、妻の実家の近くで暮らしていました。
子どもが生まれ将来設計を話し合うなかで、夫が自身の地元にUターンすることを提案しました。夫は長男なので、いずれは地元に帰りたいと思っており、そのことは妻にもそれとなく話していました。
しかし、いざUターンの話をすると、妻は大反対しました。二人目の子どもも欲しく、子育てするには東京の実家の近くがいいというのが大きな理由です。
夫は、自分の実家にも両親がいて近くに妹夫婦も住んでいるので、Uターン先でも育児のサポートが受けられると主張しますが、妻としては夫の親兄弟より肉親のほうがいいと考えていました。
子どもの進学についてもお互いの考え方にはズレがありました。
夫は自身の体験から私立小学校受験には前向きになれませんでした。「私立なんて贅沢だ。二人目を産むならなおさら、お金が掛かるので公立学校にすべき。学力も生活環境もさまざまな子が集まる公立のほうが、幅広い視野をもてるだろう。大学受験は塾に通わせればいいし、高校に入ってからの頑張りが勝負だ」という意見です。
一方、妻は受験を前提に子どもに習い事をさせていました。「受験して小学校から私立の一貫校に入れたほうが、周りも学力や生活レベルが高いので、自分の子にとって良い環境に違いない。一貫校では受験対策も学校でしてくれるので、大学進学にも有利になる。私自身も一貫校で良かったと思っているから間違いない」という意見です。
夫は改めて自分は長男なので家を継がないといけないと言いましたが、妻には実家の近くに妹さんがいるのだから将来のことは任せておけばいい、子どもにも仲良くしている友達がいるから、引っ越しはかわいそうだと言われてしまいました。
こうなると話は平行線です。どちらかというとUターン転職のリスクを冒すより、すでにある今の生活を守っていきたいという妻のほうが優勢かもしれません。
また、夫が地方出身者で地元に帰ろうとしたところ、実家の両親から帰って来なくていいと言われてしまいUターンを断念した例もありました。
「この年になって孫の世話や同居のストレスを背負うくらいなら、夫婦だけでやっていきたい。老後資金もあるし、ゆくゆくは有料老人ホームにでも入るから帰って来るな」ということでした。
こう言われてしまっては帰るに帰れず、結局そのクライアントは東京で暮らすことを選配偶者や両親の反対を押して強行にUターンしても家族仲が悪くなるだけで、幸せな結果にはなりにくいものです。配偶者と子どもを残して単身でUターンする例もありますが、それが家族にとって幸せな形かは答えが分かれそうです。