後継者がいないことを理由に休廃業する中小企業が激増しています。後継者がいない経営者が取り得る4つの選択肢では、どういった流れで後継者を絞り込んでいけばいいのでしょうか。そのメリットとデメリットとは。株式会社M&Aナビ社長の瀧田雄介氏が著書『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)で解説します。

事業承継には十分な準備期間を確保

■事業承継の要素③:知的資産の承継

知的資産とは経営理念や従業員の技術・技能、ノウハウ、経理者の信用、取引先との人脈など、貸借対照表に記載されている資産以外の無形資産を指します。財務諸表には表れませんが、どれもが事業を支える重要な要素であり、事業継続のために必要なものばかりだからこそ、これら知的資産も承継しないといけません。

 

とりわけ、中小企業の場合は現経営者が持つノウハウや信用、人脈が経営の屋台骨になっていて、社長が変わった途端に評判を落とし業績が悪化することがあります。時間をかけて後継者を育て、信用や人脈を受け継ぐなど、戦略的な視点は求められるでしょう。

 

もしくは、経営者と従業員の信頼関係が、円滑な経営の秘訣になっていた場合、代替わりして信頼関係を失うと、離職の引き金になることもあります。後継者はこういった点も理解して、信頼関係構築に早くから取り掛かる必要があるでしょう。

 

中小企業にとって知的資産が競争力の源泉であることは非常に多く、次代にうまく承継することができないと、事業の継続性は危うくなります。知的資産の承継もしっかりと押さえておきたい点です。

 

瀧田雄介著『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)より。
【図4】4事業承継の構成要素 瀧田雄介著『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)より。

 

■「つなぎたいこと」を明確に進めると事業承継を間違えない

 

事業承継を円滑に進めるためには、これら3つの経営資産を順序立てて後継者に受け渡していく必要があります。時間的に余裕をもって臨むことで、取りこぼしたり譲歩したりすることを避けられます。

 

反対に切羽詰まった状態で進めると、経営理念やノウハウを伝えきれなかったり、従業員や取引先との信頼関係を構築できないまま社長が交代したりせざるを得なくなります。そうなると、その後の経営に苦労する恐れがあります。

 

M&Aを選んだとしても、想定より安い金額で売却せざるを得ない可能性もあります。いずれにしても十分な準備期間をもって進めていくことが、スムーズな事業承継には不可欠であると覚えておくことです。
 

 

瀧田雄介
株式会社M&Aナビ 代表取締役社長

 

 

※本連載は、瀧田雄介氏の著書『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)より一部を抜粋・再編集したものです。

中小企業向け 会社を守る事業承継

中小企業向け 会社を守る事業承継

瀧田 雄介

アルク

後継者がいなくても大丈夫!大事に育ててきた会社を100年先へつなぐ、これからの時代の「事業承継」を明らかにします。 日本経済を支える全国の中小企業は約419万社。そして今、その経営者の高齢化が心配されています。2025年…

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