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事業承継の相手の探し方
■どういった流れで相手を決めるのか
事業承継の類型は大きく4種類あるとわかりましたが、どういった流れで相手を絞り込めばよいでしょうか。それを示したのが、下の図です。
まずは、親族内に後継者候補がいるかいないかです。経営者のお子さんだけではなく、親族のなかにやる気と資質のある人がいれば、親族内承継を進められます。シニアの経営者の場合、後継者=息子と考えがちですが、娘や娘の配偶者など幅広い対象から探すことです。
親族内に後継者候補がいない場合は、次に考えたいのは社内承継です。次代の経営を任すことができる役員・従業員はいるでしょうか。ここでもその有無と本人のやる気・資質が問われますが、年齢も考慮してください。
たすきをつないだ相手が高齢だと、また数年後に同じことの繰り返しになってしまいます。
社内にも後継者がいないと、社外から有能な経営者を招くか、M&Aを検討することになります。社外承継の場合は、現在の経営者や親族が株式を持ったまま経営だけ任せることができます。
一方、M&Aの場合は会社そのものを第三者に売却するので、一般的には経営権だけではなく、株式などの資産、経営理念も含めた知的資産なども承継することになります。
このように、現経営者が置かれた状況と承継相手の有無から辿っていくと、自身にとって最適なパターンが見つかるはずです。
■事業承継でつなぐのは「人(経営)」「資産」「知的資産」の3要素
事業承継は単にビジネスを後継者に渡して「はい、終わり」というものではありません。その後、安定して経営を続けていくには、現経営者が行ってきた「経営資源」を承継する必要があります。
株式の譲渡や代表者の交代に終始してはいけません。これらのみに注視すると、一時的に利益や資産を減らすなど株価対策をしたうえで親族に譲渡すればよい、反対にM&Aでは株式の評価を高めて高額で売却すればよいといったことになりがちです。
その結果、投資用不動産や高級自動車など、事業継続に必要のない資産を抱えて右往左往することがあり、これでは後継者は納得がいかないでしょう。
重要なのは、事業継続のために必要な経営資源を承継することであり、中小企業庁が公表する「事業承継ガイドライン」では、それを「人(経営)」「資産」「知的資産」の3要素に大別しています。