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FOMCによる「年内あと6回」の利上げ発表
米連邦公開市場委員会(FOMC)は先週、政策金利を0.25%引き上げ、ゼロ金利政策を解除しました。同時に公表されたFOMCの16人の委員による見通し(中央値)では、年内「残り6会合」で「6回」の利上げ実施が示されました。すなわち「毎会合での利上げ」です。
加えて、先週末と21日には、パウエル議長を含むFOMCの複数のメンバーが今後の大幅な利上げを示唆・支持したほか、[図表1]に示すとおり、直近のフェデラルファンド金利先物市場では、「年内に6回超」の利上げ織り込みとなっており、金融市場もどこかで「0.5%」の利上げが実施される可能性を織り込み始めています。
「こんなに利上げして、米国の景気や株式市場は大丈夫なのか」と不安に思うかもしれませんが、筆者は「景気も株式市場も上向き」と考えています。心配すべきは、景気というよりインフレです。
(仮に、今年の終わりか来年早々にもイールドカーブが逆転し、FRBが景気後退を恐れて利上げを途中で止める場合も、その分、インフレ圧力を残す可能性があります。プランどおりの利上げでも、途中でやめてもどちらでもインフレを気にする必要があります)
年内にあと6~7回の利上げでも景気は心配ない
[図表2]に示すとおり、FOMCメンバーの見通し(中央値)に従えば、年末時点の政策金利は1.9%、インフレ率は4.1%と示されています。よって、物価上昇を考慮した実質政策金利は「マイナス2.2%」です。
シンプルに言えば、実質政策金利は、消費を控え貯蓄を促したり、投資を抑制するほどに高くはなく、金融政策のスタンスは依然としてかなり緩和的です。
もう少し細かく言えば、年末時点の「マイナス2.2%」の実質金利と、同じ見通しから得られる①長期の実質GDP成長率「プラス1.8%」(→潜在成長率に近いもの)や、②長期の実質政策金利「プラス0.4%」(→自然利子率に近いもの)とを比べると、年末時点の実質政策金利は低いと言えます。
言い換えれば、リスクは「下向き=景気鈍化」というよりも「上向き=インフレ」であり、「こんなに利上げしても大丈夫なのか?」というより、「これだけの利上げで大丈夫なのか?」と考える必要があるのでしょう。