本記事は、フランクリン・テンプルトン・ジャパン株式会社の最新レポート『転換点に到達したか?』から一部を抜粋・編集したものです。

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エコノミストたちが頭を抱える「未解決の問題」

米国ではインフレ率が高水準で推移していることから、パウエルFRB議長が2022年に量的引き締め(QT)と数回の利上げを実施する可能性を示唆しました。一方、中国人民銀行は経済成長を後押しするため、2年ぶりに主要金利を引き下げました。

 

インフレ率の今後の推移と、それに対する中央銀行や金利の反応は、エコノミストのあいだで最大の未解決の問題となっています。

 

以下に、2022年後半に再検討されるであろう課題について、注目するいくつかの重要な見解を要約しています。

インフレ期待の管理

FRBや金融市場がまだインフレを一過性のものと軽視しているなか、当社債券グループのCIO(最高投資責任者)ソナルは、多くの家計や企業が①物価上昇による将来の消費力への影響や②不安定なインフレ期待による賃金や物価への影響を懸念していることを理解していました。

 

ソナルは、物価上昇圧力は燃料費や食費の上昇だけが原因ではなく、比較的遅いペースのサプライチェーンの正常化、異例の金融緩和政策の継続、大規模な財政拡張など、さまざまな原因によるものと評価しています。

 

また、インフレ期待は家計の行動変化を引き起こし、皮肉にもインフレ率の上昇につながるという悪循環に陥る可能性があります。

 

インフレ期待をコントロールする例として、1980年代前半のFRB議長、ポール・フォルカーが挙げられます。彼は、FRBがインフレ抑制に真剣に取り組んでいることを、言動で国民に示しました。

 

2022年に向けて、FRBメンバーの何人かはQTについて話しているとソナルは指摘しています。QTとは、9兆米ドル近いFRBのバランスシートを縮小することを意味します。

 

ソナルは、長期的なインフレを阻止するため、FRBが段階的ではなく、積極的でタカ派的なアプローチを取ることが許容されるかもしれないと考えています。また、FRBは明らかに遅れをとっており、インフレ対策にもっと積極的になるべきであるとも考えています。そして、インフレは政治的に重要であるため、そのような積極的な姿勢をとる可能性が高いとみています。

 

ウエスタン・アセットのポートフォリオ・マネージャーであるジョンは、FRBは「タカ派的になりすぎて経済成長を鈍化させる可能性」に注意すべきであり、QTと利上げのアプローチは緩やかとなる可能性が高いとみています。

 

また、米国の貯蓄率は高水準なものの、今年消費者がコロナ禍における貯蓄の大部分を使うことはないとみています。

 

ジョンは、恒常所得仮説(※1)の行動力学を指摘し、昨年のコロナ禍における財政刺激策により、米国の消費者は2022年には消費ではなく貯蓄をさらに継続することになると考えています。

(※1)恒常所得仮説とは、1957年にミルトン・フリードマンによって唱えられ、消費者は長期平均所得に応じて消費するという仮説

 

FRBがQTに着手する場合、2020年には毎日800億米ドルの米国債を購入したことを考慮すると(※2)、バランスシートを毎月1,000億米ドルずつ減らしても、長期債の利回りに大きな変化はないと考えます。

(※2)出所: Paul, H. “US Fed to Purchase $80 Billion in Treasuries, $40 Billion in MBS Per Month,” The Deep Dive, June 11, 2020.

 

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