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恐れるより行動を…ポートフォリオを変えるべき局面
株式市場が調整していますが、今回の局面は、十分な分散投資が効果を発揮した局面です。
[図表1]は、先進国株式、先進国リート、米国国債、米国ハイ・イールド債券、商品・コモディティの5つの資産を20%ずつ等分で保有したポートフォリオのトータルリターン(四半期、円ベース)を見ています。
【図の一番右】を見ると、2022年3月7日までのリターンは「プラス2.8%」となっていて、ここまでゼロ付近で持ちこたえています。
増大する政府債務とマネタイゼーション、今後の米中対立や環境意識の高まりなど、長期的なインフレを見据えた分散投資が肝心です。
そして、「短期的な景気後退を恐れるよりも、長期のインフレを心配すべきでしょうし、インフレになるなら、資産運用は続けるほうがよい」、これが今、日本の個人投資家の皆様にお伝えしたいメッセージです。
いまは、売却して怖さを減らす局面ではなく、インフレを見越して冷静にポートフォリオを変更する局面です。
ロシアとウクライナは「新冷戦」へ
さて、筆者は「ロシアと欧州の対立」は「中国と米国の対立」の縮図であり、世界は「新冷戦」に向かいつつあると考えます。「帝国」中国にとっての台湾は、「ロシア帝国」にとってのウクライナと同じ関係にあたります。
ただし、「次の戦争が『冷たい』戦争である」というのは、希望的観測でしかありません。歴史家によれば、キューバ危機の13日間に、危機一髪の出来事は10件以上あったとされています。
「そのピーク時、ケネディは、弟のロバートに対し、核戦争になる可能性は『30%強~50%』だろうと語った。その後の歴史家で、その可能性をもっと低かったと言う者はいない」(グレアム・アリソン著『米中戦争前夜』)。
ハーバード大学のグレアム・アリソン教授は「過去500年間に主要な新興国が覇権国に取って代わろうとしたケースは16件あるが、このうち12件は最終的に戦争になった」と分析しています。
①新興国と覇権国が戦争に至ったケースとしては、紀元前5世紀のアテネとスパルタ、1914年のドイツとイギリス、1941年の日本とアメリカが、②戦争にならなかったケースとしては1950年代と60年代のソ連とアメリカがこれに当たります。
衝突の背景には、『トゥキディデスの罠』があります。新興国が台頭して権利を主張し始めると、既存の覇権国は「自分たちの地位を脅かすのではないか」と疑心暗鬼になります。
新興国の側に覇権国を脅かす「意志」が実際にあるかどうかは問題ではなく、「そうした意志があるのではないか」と覇権国を不安にさせることが衝突を招く、というのがポイントです。また、こうした状況は、国と国との間だけでなく、職場でもよく見られる光景でしょう。