「のびのび子育て」という理想論が
実際に私のクライアントにも都内の大手企業やベンチャー企業など自分の力を試せる仕事を選んでいる人がたくさんいて、30代男性で年収600万~800万円超、夫婦共働きで世帯年収1000万円超というケースは非常に多いです。早くに部下をもってバリバリ活躍している人やグローバルな仕事をしている人、会社のエースとして期待されている人などが少なくありません。
そういう人たちは、幼児のうちから必死に受験勉強などしなくても人並み以上の進学・就職ができたという成功体験をもっています。そのため、自分の子どもも、わざわざ都会で受験競争に参加させるより、地元で伸び伸び育てて心も体も元気に成長してほしいと考える傾向が強いのです。
私のクライアントも地方の公立高校から都会の大学へ進学し、都会で就職したあと、Uターンして来る人たちが大半です。彼らの転職の理由や動機を掘り下げていくと、自分が育ったように、わが子にも祖父母が近くにいて、自然豊かな環境で育ってほしかったからという声を頻繁に聞きます。
■実家近くに住めば両親のバックアップがあるのも魅力
子育て世代が地元に帰ることのメリットの一つに、実家にいる両親の子育て参加が期待できることがあります。子育ては人手があるに越したことはありません。育児をよく分かっていて、孫を愛してくれている自分の両親ならサポート役として最適です。
実家から親を呼びよせて世話してもらう手もありますが、親も都会暮らしは慣れませんし、地元での人付き合いやお墓を守る必要などもあったりします。そう長くはいてもらえないとなると、親を呼ぶより自分たちが向こうに行ったほうが環境もいいという流れになっていきます。
私のクライアントにも、Uターン転職して実家の近くに住んでいる夫婦がたくさんいますが、自分たちが不在の間でも両親が子どもを見てくれるので安心して仕事に集中できるという意見が多いです。
例えばこんなケースがありました。東京にいた頃は子育てとの両立で妻がパートタイムの仕事しかできませんでしたが、Uターンしてからはフルタイムで働けるようになったというケースです。この夫婦の場合、転職によって夫の年収は1割程度下がりましたが、妻の収入が増えたことで東京暮らしの頃より世帯所得としては増額しました。
さらに、夫からこんな話も聞きました。東京にいた頃は妻からたびたび「もっと積極的に家事や育児を手伝ってほしい」「私だってもっと仕事がしたい」と不満をぶつけられることが多かったといいます。ところが、妻の地元に転居してからは子育てのヘルプ先が増えて負担が減ったり、同年代の地元のママ友との子育て情報の共有ができたりすることで妻が穏やかになり、子どもにも良い影響が出て自分もストレスが減ったというのです。
仕事に集中できる、何かあったときに子どもの対応を任せられる人がいるということは、家族みんなの平安につながるのだなと思わされた事例です。