(画像はイメージです/PIXTA)

事業の失敗で自己破産した夫は、後妻とその父親の資金援助でビジネスを立て直すことができました。夫婦は子どもにも恵まれ幸せいっぱいでしたが、気がかりなのは、夫が先妻との間にもうけた2人の子どもです。後妻は、自分と父親の援助で成功した夫の財産が、先妻の子どもたちに相続されることに納得できません。長年にわたり相続案件を幅広く扱ってきた、高島総合法律事務所の代表弁護士、高島秀行氏が実例をもとに解説します。

子どもには遺留分あり…遺言書を残すのは無駄なのか?

花子さんの「自分が和夫さんをゼロから立ち直らせて財産を築けるようになったのに、自分と結婚した後に築いた財産を一部でも前妻の子である洋君と海君に一部でも取られてしまうのは納得できない」という気持ちはよくわかりますが、現行の法律上は、花子さんの気持ちに応えることはできません。

 

しかし、遺言を書いても遺留分があるので、遺言書を書いても無駄かというとそうではありません。

 

遺言書を書かなければ、洋君と海君の相続分は6分の1ずつで合計3分の1となります。遺産が3億円あると、合計1億円支払わなければなりません。

 

遺言書を書けば、遺産が3億円あった場合、洋君と海君の遺留分は12分の1ずつで合計6分の1となり、法定相続分の場合の2分の1である5000万円で済むこととなります。

 

また、遺言書を書かない場合、相続権は時効にはかかりませんので、和夫さんが亡くなった後に何年経っても、和夫さん名義の土地建物を遺産分割してほしいと言われると、分けざるを得ません。

 

しかし、遺言書がある場合、遺留分は遺留分侵害を知ってから1年、遺留分侵害を知らなくても相続発生から10年で時効となり、消滅してしまいます。

 

したがって、和夫さんが亡くなったあと、和夫さんと音信不通の洋君と海君が、和夫さんが亡くなったことを知らずに10年経過してしまえば、遺留分の請求を受けることがなくなってしまうこととなるのです。

 

ただし、遺言書を書いても、和夫さんの名義で財産を取得すれば遺留分は発生しますので、そもそも財産を取得するのであれば和夫さん名義ではなく、花子さん名義で取得し、なるべく和夫さん名義の財産を減らすということも、花子さんの気持ちに応える方法となります。

 

飲食店を経営する際に株式会社を設立して行っているかと思いますが、和夫さん名義の土地建物だけでなく、この会社の株式も和夫さん名義であれば相続の対象となります。

 

和夫さんの成功が、花子さんや花子さんの父親である太一さんの資金的援助によるものなのであれば、飲食店を経営する会社の株式は、太一さんや花子さんの名義にしておくことも重要かと思います。


 

※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

高島 秀行
高島総合法律事務所
代表弁護士

 

 

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