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正しい経済対策で所得2倍は可能な根拠
■岸田ビジョンに「希望」はあるか
――「なぜ、日本人の9割は金持ちになれないのか」というテーマで藤井先生にいろいろお話をうかがっていた矢先、岸田内閣が誕生しましたね! 先生はこの内閣で、日本経済はどうなると思われますか?
藤井 それを考える上で一番大事なのは、岸田総理は「所得倍増」を目指すという話を軸にして公約をつくり上げ、それで総裁選挙に打って出て勝利したという事実です。「所得倍増」というビジョンはこれまで池田勇人が昭和時代に主張し、それを実現させたのが有名ですが、それ以降でこの言葉をハッキリと使って総理大臣になったのは岸田さんが初めてです。だからこれは画期的な話なわけです。
もちろん、この「所得倍増」というビジョンは単なる絵に描いた餅に過ぎず、選挙対策のためだけに岸田さんが口から出任せにいっていたウソ話なんだったらどうしようもないですが、僕は岸田さんが本気で所得倍増に取り組めば、間違いなく日本経済は良くなると思います。っていうかもっとハッキリいうなら、岸田さんが正しい対策をしっかりと行えば所得倍増ができないなんてことはあり得ない。
つまり、岸田さんが本気である限り、この令和の時代に私たちの所得が2倍になることは確実に可能だと確信しています。
――希望はある、っていうことですね!?
藤井 はい、もちろん。「希望」はあります。ただ、繰り返しますが、それは本当の本当に岸田さんが所得倍増に「本気で取り組めば」という条件付きの話です。
そもそも、令和3年9月の自民党総裁選の候補の一人だった河野太郎さんなんかは、所得倍増なんて全くいってませんでしたし、日本を成長させてみなさんの貧困や格差の問題に取り組むんだ、なんてこともいってませんでした。だから、もしも河野総理が誕生していたら、日本経済が良くなるなんていう可能性は万に一つもないっていう絶望的な状況になっていたわけです。それに比べれば、岸田さんの方が圧倒的に希望はある、とはいえます。
それからもう一ついえるのは、もし、岸田さんが総理大臣として何をやっても、何をどう頑張ったって、私たちの所得が2倍になるなんてことは絶対にない――ということなら、これもまた絶望的な状況だってことになりますよね。でも、それについては全く問題ない。
岸田さんが、たとえば本書でじっくりお話しする「正しい経済対策」を行えば、10年もあれば私たちの所得が2倍になるということは、絶対に可能なんです。
■「財政再建は大切だ」といい続ける危うさ
――なるほど。では、岸田総理がやろうとしていることは、「正しい経済対策」だといえるわけですか?
藤井 まさにそこが問題なのですが……少なくとも、岸田さんが総裁選に出馬される前に出版した『岸田ビジョン 分断から協調へ』(講談社)という本を読んだ限り、とても良いこともたくさん書いてあるのですが、経済成長にとって肝心要の「日本の貧困化が終わるまで政府支出を拡大していく」ということが、書かれてないのです。岸田さんは、「財政再建は大切だ」といい続けておられ、それがネックとなって所得倍増は実現できない可能性が考えられてしまうわけです。
いい換えるなら、岸田さんが、今考えている経済対策をしているだけなら、それでもある程度は、私たちの所得が増えていくことはあり得るとは思いますが、「倍増」といわれるほどに勢いよく増加していくことは難しいと思います。