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岸田内閣の「所得倍増」は失敗に終わるのか
■本来の「アベノミクス」をきちんとやれば成功する
――じゃあ、岸田さんの「所得倍増」計画は失敗に終わる、っていうことでしょうか?
藤井 もしも岸田さんが「分配」の問題だけをいじるのだと考えているとしたら、岸田ビジョンは確実に頓挫します。でも岸田さんはそれもわかっている。だから岸田さんは、分配だけでなく、しっかり「成長」っていうこともいっている。
――つまり、パイの分け方を改善するだけではなくて、パイそのものも大きくしていく、っていうことですね。
藤井 おっしゃる通りです。岸田さんは確かにそれも主張している。だけど問題は、その成長のために必要な取り組みが、岸田さんが出版した岸田ビジョンのなかには、しっかりと書かれてないんです。ここが、岸田さんの所得倍増計画のなかで、最大の懸念事項です。
――岸田さんはどうやって成長を導くんだっておっしゃっているのですか?
藤井 一言でいって、岸田さんは、金融政策、財政政策、そして、成長戦略の三つを組み合わせて、日本を成長させるんだ、といってるんです。つまり、これは安倍さんのアベノミクス路線を継続して、成長を導くんだ、といってるわけです。
――でも、アベノミクスって失敗したんですよね?
藤井 国民のみなさんにそういわれてもしょうがないですね。後でじっくりお話ししますが、安倍内閣下で私たちの給料は大幅に下落してしまったんですから、所得の倍増どころの話じゃないんです。でも、それは、アベノミクスの考え方が間違っていた、ということを意味しているのではありません。アベノミクスの考え方はそれはそれでよかったんだけど、それを安倍さんはしっかりと「やり遂げなかった」っていうところが問題だったんです。
――何がダメだったんですか?
藤井 要するに、「財政政策」というのが、著しく不十分だったんです。っていうか不十分どころか、財政政策でやるべきことと「正反対」のことを安倍さんはやっちゃったんです。それは何かというと、消費税です。
――安倍内閣の発足時は5%だったのに、二回も増税して、最後は10%にまで引き上げちゃったという消費増税ですね!?
藤井 そうです。安倍さんは、二回に渡って消費税を上げた。財政政策のことについては、この連載でも詳しくお話ししていきますけど、財政政策っていうのは要するに「政府から民間へのおカネの流れを拡大する」というもの。
だから、政府が国民にカネをさまざまな格好で支払っていくというのも財政政策ですが、税金を減らしていく、減税していくっていうのも財政政策なんです。一方で、消費増税というのは、民間から政府に逆におカネを吸い上げていくっていう話ですから、財政政策とはまるで逆の取り組みが消費税増税なんです。
しかも、税金にはいろいろありますが、そのなかでも消費税というのは、経済を冷え込ませるにあたって最もインパクトのデカい税金なんです。なんといっても、あらゆる経済活動において、支払いの度におカネを政府に支払うっていうのが消費税なんですから、あらゆる経済活動が停滞していくわけです。
さきほどお話しした「配当金」についてだけの課税だったら、株主の投機行動が抑制されるだけだから、経済に対するインパクトはさしてない、っていうより、過剰な投機行動が抑制されるのでむしろポジティブな影響さえあり得るわけですが、消費税の場合は、すべての経済活動に直接関わりますから、悪影響しか生じないんです。
そんな最悪の増税を安倍さんは2回もやって、消費税率を5%から10%へと、驚くべきことに「2倍」にまで増やしてしまったわけです。
これは明らかにアベノミクスでやるべきこととは完璧に「逆」のことです。だから、アベノミクスをやって失敗したって話じゃなくて、アベノミクスをちゃんとやらなかったので失敗したという話だったわけです。