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デフレが日本人の給料を伸びなくした原因
■国民の所得が減り続けていく「デフレ不況」
――日本はずーっと「デフレ不況」だといわれてますよね。そもそもインフレとデフレは、どこがどう違うのか。改めて、教えてください。
藤井 インフレはインフレーションの略称で、インフレーションとは「膨張」っていう意味です。だから、投資や消費も増えるし、賃金も増えて、物価も上がっていきます。デフレはデフレーションの略で、膨張の逆の「収縮」を意味します。
だから、投資も消費も減り、賃金も物価も下落していきます。もっとわかりやすくいうと、みんながお金持ちになっていく経済状況がインフレ、逆にみんなが貧乏になっていく経済状況がデフレです。だからよく政治家たちが「デフレ脱却!」っていってますが、これって「貧乏脱出!」っていってるのと同じなんですね。
それで、インフレになるのは、モノやサービスを生産する量「供給」よりも、人がモノやサービスを買う量「需要」が多い場合。デフレになるのは逆に、人がモノやサービスを求める量「需要」に比べると、モノやサービスを生産する量「供給」のほうが多いときに起こります。要するに、「需要」が足りなくて、モノの値段が下がり続ける状態です。
――モノの値段が下がるっていいことじゃないですか! なんでも安くなったほうが、私たちの生活はラクになるでしょう。
藤井 いやいや。喜んでいる場合ではありませんよ。デフレになると下がるのは物価だけじゃなくて、給料も下がっていくんですよ。デフレというのはみんなが貧乏になっていくっていうことなんですから、いいことのはずがないじゃないですか。
そもそも需要より供給が上回っているというのは、つまり、つくったモノが売れ残るということです。売れないと、企業は商品の値段を引き下げます。それでも売れないと、原価ギリギリの値段まで下げてでも売ろうとする。結局、売れなくても売れたとしても、企業の利益は減ります。
そうなると、そこで働いている人たちの給料が減って貧乏になります。貧乏になれば、節約せざるを得なくなります。そうなると、世の中の消費が減ります。世の中の消費が減少すれば、別の人たちの給料も下がります。あなたやあなたの家族の給料も下がってもっと貧乏になります。多くの人が財布の紐を締めるようになりますから、ますますモノが売れなくなって、どんどん経済が落ち込んでいってしまうわけです。
――いわれてみれば、確かに物価と共に我が家の収入も落ちてきています。あれが安くなった! これも安い! と喜んでいるうちに、めぐりめぐって自分たちの賃金も安くなっていたわけですね。今の今まで、それに気づかなかったなんて、我ながらほんとにアホですねぇ……。
藤井 デフレ、インフレをただ単にモノの値段の変化だと思っていると、モノの値段が下落するデフレは悪いという感じがしないでしょ。でも、もともとの意味が最初にいったように、インフレは「膨張」、デフレは「収縮」です。だから、インフレは経済が膨らんでいくイメージ、デフレは経済が縮んでいくイメージで考えてください。
――あ、そうでした。それだとわかりやすいですね。デフレは経済が縮んでいくのだから、いいわけがない。って、これからも経済は縮むわけですか?
藤井 はい。政府が何もしなければ、デフレは自動的に悪化していくんです。いったん坂道で石が転がりだしたらずっと転がり続けますよね。それと同じです。たとえば企業は、給料を削減しても利益が確保できなければ、従業員を解雇することになります。失業者はいよいよモノを買えなくなります。そういう人が増えると、なおいっそう景気は冷え込みます。
このように、「デフレ不況」というのは、値段を下げても需要が伸びず、景気の悪化が繰り返されて止まらなくなり、ますますデフレが進行するという悪循環が続く状況です。簡単にいえば、私たちの「所得」が下落し続けていく状況を指します。
――これから先も、下がり続けるんですか?
藤井 はい、確実に。デフレから脱却しない限り、国民はどんどん貧しくなっていきます。
――ゲーッ!