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働き盛り、子育て世代ほど給料は減少する
今回の東京オリンピックでは改めてスポーツの素晴らしさを教えてもらいました。アスリートの皆さんには感謝の想いを届けたいと思います。
さて、39歳のソフトボールの上野由岐子選手から、14歳のスケートボードの西矢椛選手や13歳の開心那選手まで、私たちに感動を届けてくれた、並みいる金メダリストに代表される幅広い年齢層はいわば「新五輪世代」と言えるでしょう。今後の日本を背負ってくれることになります。
ところが経済社会では多くの若者ががんばって報われる環境に恵まれていません。政官エリートが25年にも及ぶ慢性デフレを放置してきたからです。
選手達の奮闘をテレビ観戦しながら、考えました。なぜ日頃は縁遠い種目のスポーツに惹きつけられるのか、と。どれをとっても私たちが働く世の本来あるべき姿を映し出すからでしょうか。
自由主義経済の原則は、万人が平等に働く場やビジネスに参加する権利を持ち、公正なルールのもとで切磋琢磨することです。オリンピック競技でも基本は同じです。一度の負けで次に進めなくなる競技は多いですが、敗者が復活できるゲームもあります。スケートボードのように、失敗しても、次の挑戦で挽回できるというのにはわくわくさせられます。いつか来る大波に乗れば一発逆転できるサーフィンも若者ならではのスポーツなのでしょう。
現代日本の実社会に目を転じると、いまの若者や働き盛りの世代は総じて恐るべきハンディを負っています。というのも、自身の才覚や努力が所得や仕事の機会に繫がる土俵が脆弱だからです。
物価は悪しき政治と政策によって人為的に押し上げられ、賃金はじわじわと目減りしています。希望する仕事に就ける機会が年を重ねるごとに小さくなっています。それが日本特有の慢性デフレ病です。しかも、進行速度が緩慢であるために自覚症状が乏しい。デフレ経済では、就職して、がんばって働いて、伴侶を得て、家庭を築き、マイホームを建てて、子育てに励む、そういう、これまで伝統的でごく当たり前だった人生の道のりが勤労世代全体に当てはまらなくなっています。
2000年から2020年までの平均月給を見てみると、30歳代から40歳代までどの年齢層も2010年まで下落傾向でした。2012年12月からアベノミクスが始まると、20歳代から30歳代は上向きましたが、40歳代は漸減傾向が続きました。
しかし、コロナ禍の2020年にはすべての世代で下がりました。同年の月給を20年前の2000年と比較すると、20歳代前半が7500円増えただけで、30歳代前半が1万6400円、同後半が2万7700円、40歳代前半が2万5500円の減少となっています。
一般的にはコロナ不況の深刻さに目が向きがちですが、働き盛り、子育て世代の給与所得は長期的に減る傾向になっています。新五輪世代が先行きを不安視して、子づくりに慎重になるのは無理もありません。