「単なる紙切れのお金って何?」あなたはMMT(現代貨幣理論)を信じられますか?

日本の借金は過去最大の1220兆円に上りますが、日本は財政破綻していません。では、お金とは何でしょうか。なぜ、単なる「紙切れ」の紙幣で買い物ができるのでしょうか。元内閣官房参与の藤井聡氏が著書『なぜ、日本人の9割は金持ちになれないのか』(ポプラ新書)で解説します。

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銀行に「お金がない」って本当ですか?

■「おカネ」とは何か?

 

藤井 一般的な経済学者も、政府も世間も、「財政破綻」という病にかかっているのは、間違った「貨幣観」に毒されているからです。ほとんどの人が誤解しているので、ちょっとここで、私たちが今、「おカネ」と呼んでいるものがいったい何なのか、解説しておきたいと思います。「おカネ」って、何だと思いますか?

 

――えっと……簡単にいうと、「お札」と「硬貨」のことですよね。

 

藤井 それもおカネです。間違いありません。じゃ、毎日コツコツ働いて、たとえば手元に10万円が溜まりました。どうします?

 

――とりあえず銀行に預けにいきます。

 

藤井 何に変わります? 

 

――預金に変わる。

 

藤井 そう。現金を家に置いてたらなんとなく不安だし、銀行に預けておいたら安全かなと思って、銀行へ持っていく。そしたら預金通帳に100,000という数字が記入されますよね。一生懸命に稼いだ10万円、自分の汗がしみついた10万円が銀行にある感じがするでしょう? 銀行にものすごくでっかい金庫があって、私たちが預けたおカネがそこに集まっている気がしますよね。

 

――アニメや映画で、よくありますね。目出し帽をかぶった強盗団が銀行を襲って、巨大金庫のドアのハンドルをゆっくりと回す。ドアが開いて金庫に入ると、札束がこれでもかってくらい、びっしり並んでる!

 

藤井 そうそう。でも、そのイメージは間違いなんですよ。私たちが、銀行におカネをいっぱい預けているでしょう。それをある日突然、みんなで示し合わせて、A銀行へ決めた時間に全部引き出しにいったら、銀行は、「すみません、現金が足りません」っていいますよ。銀行には、現金は少ししか置いていない。

 

――へえ〜。じゃあ、どうやって、やりくりしているんですか?

 

藤井 私たちは銀行におカネを預けていますが、全額下ろすことはほぼないでしょう? ほとんどの預金を塩漬けにしているじゃないですか。銀行は、預かった現金を全部銀行に保管しておいても無駄になる。だから、銀行には現金を少ししか置いていないんです。

 

――あとの現金は、どこに置いてあるんですか?

 

藤井 っていうか、現金なんて、日本にはほとんど、どこにもないんですよ。

 

――えっ?

 

藤井 私たちの貯金って、1056兆円(2020年12月末時点)くらいあるのですが、それがどこかに溜まっているような気がするかもしれないけど、溜まっていないんです。数字しかないんです。たとえば僕が「銀行に100万円預けています」ということは、「通帳に1,000,000と書いてある」だけなんですよ。

 

――えーっ!

 

藤井 「おカネを使う」というと、お札をやりとりしているイメージがあるでしょう? でも多くの人は今、お札をほとんど使っていない。なぜなら、ICカードとかクレジットカードとかがあるじゃないですか。たとえば、家族で焼肉屋さんに行きます。みんなで2万5000円分食べました。僕がクレジットカードで支払います。僕の銀行口座の預金の数字がその分減るだけで、僕も焼肉屋さんも一枚のお札も触っていない。

 

最近は、小さなコンビニでも電子決済ができる店舗が増えてきて、霞が関あたりで暮らしている人のなかには「僕、現金を持たないんだよ」という人がたくさんいますからね。

 

だから、日本国民の貯金が1000兆円以上あるのに、紙幣の数は、国内にそのだいたい十分の一の百兆円分くらいしかないんです。つまり、貯金の9割は「紙幣」っていう実態が伴ってない、単なる数字なんです。

 

――この前、海外の街角で女性のバッグの中身を見せてもらうというテレビ番組を放送してましたが、キャッシュレス化が浸透している韓国の女性たちは、ほとんど現金を持っていませんでした。確かに、私も現金をたくさん持ち歩くことは少なくなりましたね。スーパーで買い物をしても支払いはクレジットカードですから。

 

藤井 しかも今、給料はたいてい銀行振り込みでしょう。それで、電子決済していると、現金を触ったことがない人もいるわけですよ。だから、銀行預金の通帳に書いてある1,000,000という「数字」そのものがおカネなんですね。不思議でしょう?

 

――子どものときには考えられなかった話です。

 

藤井 カード決済なんて普及していませんでしたからね。昔は、給料日になるとお父さんが現金の入った給料袋を持って帰ってきたんですよ。お母さんはその給料袋から家賃とか電気・水道代とか当座の食費とか、とりあえず必要な分だけ取って、翌日、残りの現金を大事に銀行へ預けにいった。

 

でも今、給料は銀行振り込みになっていて、使うときは電子決済する。だから現代、「おカネ」と呼ばれているものには、「現金」と「預金」の2種類があるわけです。一般に、それらは「現金通貨」と「預金通貨」と呼ばれています。だから、もし10万円のおカネをタンスに入れていて、100万円を銀行に貯金として預けている人がいたとすれば、その人は、10万円の現金通貨と100万円の預金通貨を持っている、というわけです。

 

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京都大学大学院工学研究科教授
元内閣官房参与

1968年、奈良県生まれ。京都大学大学院工学研究科教授(都市社会工学専攻)。元内閣官房参与(防災・減災ニューディール担当)。京都大学工学部卒業、同大学院修了後、同大学助教授、イエテボリ大学心理学科客員研究員、東京工業大学大学院教授などを経て、2009年より現職。2012年より18年まで安倍内閣において内閣官房参与。2018年よりカールスタッド大学客員教授、ならびに『表現者クライテリオン』編集長。文部科学大臣表彰、日本学術振興会賞など受賞多数。専門は公共政策論、都市社会工学。近刊に『令和日本・再生計画』(小学館)、『こうすれば絶対よくなる!日本経済』(アスコム刊、田原総一朗氏との共著)、『ゼロコロナという病』(産経新聞出版刊、木村盛世氏との共著)などがある。

著者紹介

フリーランスライター

フリーランスライター。OLを経て、新聞や雑誌で放送関係の記事を執筆。イギリス遊学後、女性の生き方から科学、宗教、アフリカの貧困問題など興味のあるものは何でも書き、書籍のライティング(聞き書きスタイルの執筆)でベストセラーを手掛ける。著書に『生きて生きて生きて 愛の極みまで 16人の宣教者+曽野綾子』(海竜社)、『「自分を変える」ということ』(齋藤直子との共著 幻冬舎)。

著者紹介

連載令和版「所得倍増」計画はこうすれば実現する

本連載は藤井聡氏の著書『なぜ、日本人の9割は金持ちになれないのか』(ポプラ新書)から一部を抜粋し、再編集したものです。

なぜ、日本人の9割は金持ちになれないのか

なぜ、日本人の9割は金持ちになれないのか

藤井 聡 木村 博美

ポプラ新書

「日本経済の5つの嘘」にだまされるな! この「嘘」に気付かなければ、あなたは一生貧乏でいるしかない。富裕層だけが知っている日本経済のからくりとは? コロナ禍をうまく脱却すれば、日本人はやっと金持ちになれる。 安…

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