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1997年金融危機に日銀特融が発動された
■政府はいくらでも貨幣を供給できる
――政府がいくら借金しても破綻することはない、ということですが、そもそも政府が国債を発行しても、その国債を銀行が買ってくれなくなったらどうするんですか?
藤井 日本銀行は、普段の業務のなかで、市場に出回っている国債を売り買いしています。もしも、政府におカネを貸す銀行が減ってきて、国債の価格が不安定になってくれば、日本銀行は安定化を目指して市場で売られている国債を買っていく。そうすれば、あるいは「そうする」と公言するだけでも、国債の価格が安定化し、政府に対しておカネを貸す銀行、すなわち政府におカネを貸す人がいなくなっていく、という事態を回避することができます。
万が一、とんでもない天変地異などで国民が困窮し、税金が1円たりとも納入されなかったとしても、そして仮にそのとき政府が発行する国債を購入する民間銀行が一切なかったとしても、「最後の貸し手」である日本銀行が国債を購入して政府におカネを貸してくれます。この「最後の貸し手」という機能は法律でしっかりと定められていますし、先進諸国ならどこの国の中央銀行にもある当たり前の機能です。
――どんな事態になっても、最後は、日本銀行が国債を買って、政府におカネを必ず貸してくれるわけですね。
藤井 そうです。記憶に新しいところでは、バブル崩壊後、コスモ信用組合や北海道拓殖銀行、山一證券などいろんな金融機関が相次いで破綻したときに、日本銀行は、「日銀特融」という制度で無担保・無制限の融資を行って預金者たちの預金を全額守ったりしています。そうしなければ、日本経済が大パニックになるからです。それを踏まえれば、もしも政府が破綻の危機にさらされることがあるとしたなら、そのときに日銀特融を発動しないわけがない。
しかも、日本銀行は日本政府の子会社です。これは民間企業でも同じですが、親会社と子会社の間のおカネの貸し借りは、連結決算で「相殺」されます。つまり借金が存在しないことになるのです。驚かれるかもしれませんが、これは紛れもない事実です。一応、政府は日銀が保有する国債について利子を払い続けていますが、日銀の決算が終わると、「国庫納付金」として返還されています。
つまり国債の利子が、政府→日銀→政府と行って帰ってくる。要するに、実質的にいうと、政府が日銀からおカネを借りても利子がつかない、ってことになってるわけです。
ちなみに、アベノミクスと呼ばれる経済政策のなかで、日銀は年間80兆円もの国債を買い続けました。「預金取扱機関」が保有する国債が、「日本銀行」に移転されていったわけです。
こうなれば政府の負債は事実上、減少し続けたってことになります。なぜなら、預金取扱機関が保有する国債というのは、政府が過去に借りたおカネの借用証書ですが、それを政府の子会社である日本銀行が買い取るということは、実質的に「借金は棒引きされた」ことになるからです。
たとえばあなたが、隣のおじさんに100万円借りていたら借金ですが、その借用証書をあなたの(大金持ちで、かつ、絶対に別れることがないと決まっている)配偶者が買い取ってくれたら、その借金は実際上、事実上、帳消しになりますよね? それと同じように、日銀が国債を買い取れば、政府の借金は事実上、「帳消し」になるんです。
もっともシンプルな政府の資金調達の方法に「日銀直接引き受け」とか「ヘリコプターマネー」とか呼ばれているものがあります。これは、日銀が政府に資金を直接融資するという方法です。
日本銀行は、「銀行の銀行」であり、各銀行は日本銀行のなかに口座を持っています。その口座に入っている預金を「日銀当座預金」といいますが、これはちょうど、私たちが普通の銀行に「口座」を持っていて、そのなかに「預金」があるのと同じです。
銀行は、この日銀当座預金を引き出して現金に換えたり、銀行同士の支払いなどに使ったりしているわけです。そして政府もまた、日銀に口座を持っています。
「ヘリコプターマネー」の場合、政府が借用証書を書いて日銀に渡し、日銀はそれと引き換えに、政府の日銀当座預金にその金額を書き込みます。一応、「日銀が政府におカネを貸している」という体裁にはなっていますが、前にお話ししたように日銀は政府の子会社ですから、事実上の借金ではありません(正式の会計手続きでは、「連結決算」で「相殺」されるということになります)。
つまり、借金が棒引きされて存在しないことになります。だから結局は、ただ単に政府が「貨幣をつくり出し、それを使う」ということにほかなりません。