(写真はイメージです/PIXTA)

さまざまな賃貸トラブルのなかでも、特に多いのが「騒音に関するトラブル」と「入居制限に関する特約違反」です。実は、これらの賃貸トラブルがあったとしても、家主は必ずしも賃貸借契約を解除できるわけではないのです。本記事では、不動産法務に詳しいAuthense法律事務所の森田雅也弁護士が、どのようなケースで賃貸借契約を解除できるのか、注意点やポイントについて解説していきます。

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「騒音トラブル」による賃貸借契約解除について

賃借人のいわゆる迷惑行為は、家主さんにとって悩ましい問題の一つでしょう。

 

その迷惑行為の一例として、「賃借人が部屋のなかで仲間と夜遅くに大騒ぎし、近隣の他の住人を困らせている」というような騒音の問題が挙げられます。

 

この騒音問題については、一般的なマンションなどの賃貸借契約書であれば「賃借人は他人に迷惑を及ぼす行為をしてはならない。」といったように迷惑行為を禁止する特約が定められていることが多く、違反した場合には賃貸借契約を解除できると規定されている場合もあります。

 

しかし、マンションなどの共同住宅で生活していれば、生活騒音が出ることはやむを得ないことです。

 

このことから、騒音が社会生活上で通常受忍すべき限度(受忍限度)を超えている場合に、初めて迷惑行為禁止特約に違反することになります。

 

受忍限度を超えているかどうかは、騒音の大きさや頻度、騒音を発する時間帯、そして生活上必要やむを得ない騒音であるか否かなどの事情を考慮して判断されます。

家主必見!「騒音トラブル」対応のポイントは…

賃借人の騒音による迷惑行為が発覚した場合に重要なのが、まずは口頭でも構わないので、家主もしくは管理会社から勧告を行い、賃借人に注意を促すことです。

 

度重なる注意にもかかわらず、賃借人がこれを無視し、その後も引き続き受忍限度を超えて騒音を出すような迷惑行為が繰り返された場合には、家主と賃借人との間の信頼関係は破壊されたといえるため、迷惑行為禁止特約違反を理由とする家主からの賃貸借契約解除が認められる可能性が高いといえます。

 

なお、仮に賃貸借契約書に迷惑行為禁止特約がなかったとしても、賃借人には「契約または目的物の性質によって定まる用法に従い使用収益をなさなければならない」という義務(民法616条・5941項)、いわゆる「用法遵守義務」があります。

 

賃借人がこの用法遵守義務に違反し、家主との信頼関係が破壊されたといえるような場合は、家主は賃貸借契約を解除することができます(横浜地方裁判所判平成元年.10.月27日判決)。

 

部屋のなかで大騒ぎして近隣に迷惑をかけ、それが受忍限度を超えるようなものであり、また、注意しても改善しないようなケースであれば、この用法遵守義務違反に該当するとされ、賃貸借契約を解除できるものと考えられるのです。

 

賃貸借契約を解除した後は、迷惑行為を行なっている賃借人に対し退去を要求します。

 

ここで賃借人が任意で立ち退かない場合、裁判で判決を得て強制執行を行うことになりますが、その場合は裁判において「受忍限度を超える迷惑行為があった」という事実を立証しなければなりません。

 

この立証においては、被害にあっている近隣住民の証言や被害の日時を記録したり、注意勧告の際のやりとり等を日記やメモに記したり、騒音計でどのくらいの音量であるかを測ったり、実際の騒音を録音する等、賃借人の迷惑行為の実態が明らかになるような証拠を残しておくことが有効だといえます。

入居制限の特約に違反し、第三者が同居しているケース

次に、入居制限の特約違反を取り上げたいと思います。

 

賃貸借契約書の特約で、「許可なく第三者を同居させてはならない」というように入居者を限定していたにもかかわらず、その指定した入居者以外の者が許可なく同居している場合、どのような対応をとりうるのでしょうか?

 

単身用の部屋に複数名が居住すると、部屋が通常より傷つけられやすいことに加え、複数名の発する騒音で近隣に迷惑をかけることにもなりかねません。

 

このような問題を防ぐために、通常、賃貸借契約書には居住する人数を制限する条項を設けます。

 

もし規定した者以外が住んでいれば、契約義務違反に基づいて賃貸借契約を解除し、退去を求めることになります。

 

ただし、気をつけていただきたいのが、このような契約義務違反があっても、即契約を解除できるというわけではないということです。

 

賃貸借契約のような継続的な契約関係においては、「賃借人に契約義務違反があっても、その契約義務違反が賃貸人に対する信頼関係を破壊するに至る程度のものでなければ、解除権の行使は認められない」というのが判例に基づいた考え方であるためです。

 

次ページしかし、家族や恋人を同居させていても…

本記事はAuthense不動産法務のブログ・コラムを転載したものです。

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