ロシアへの強力な経済制裁が中国を追い詰める恐れ
今回の、ロシアに対する西側諸国の一致団結した経済制裁について、「中国を意識したものであり、同国の台湾侵攻(や新冷戦への突入)を思いとどまらせる狙いがある」との考えがあるかもしれません。
しかし、筆者は、逆に中国を追い込むことになるのではと不安視しています。
中国にしてみれば、祖国の「統一」に進む主権国家としての動きを、(経済の)「強力な力」によって他国から思いとどまるよう迫られることは極めて理不尽に映っても不思議ではありません。大事なのは、「これからそう迫られる」のではなく、ロシアへの経済制裁によって「もうすでにそう迫られている」ということです。
習近平・国家主席は、昨年10月の辛亥革命110周年記念大会で、台湾「統一」を「果たさなければならない」と述べています。大国としてのメンツ、人民の求心力、そして祖国統一の野望を考えると、現在の習指導部は、(欧米列強の植民地が拡大するなかで、理不尽に追い詰められたと感じた)第2次大戦前の日本の指導部のように、「退けず、戦うほかない」状況に置かれているようにも思えてきます。
対立の鮮明化で、中国は今後、ロシアから原油や天然ガス、小麦やパラジウム、レアアースなどを安く調達することができます。習指導部は、14億人を超える人民の生活を支える必要があります。一帯一路もその一部です。
「この危機は、プーチンがいなくなれば終わる」という考えもあり、そうなれば株価は急伸するかもしれません。しかし、(たとえば)新たな「民主ロシア」が「西側につく」ことを中国が許容するかと問えば、そのハードルは高いでしょう。それは、ウクライナがNATOに加盟することをロシアが阻止するのと同じです。
中国は、資源が豊富なロシアを自分たちの側に留めるように思えます。(いずれにせよ、ロシアと西側諸国の自由貿易が再開されるのは、事態がうまく運んでも、先になるように思えます。)
もちろん、反対に「弱腰」でも中国の動きを前に進ませることになるでしょう。すなわち、どちらに進んでも、中国は台湾統一に向けて動き、中国と米国の対立が一段と深刻化する可能性は低くないと思われます。
やはりわれわれは「新冷戦」や「米中ブロック経済」に向かって進んでいるように思えます。
原油は重要ではない?
現在の中国が、1970年代当時のOPECに当たる
以前筆者は、過去24の地政学イベントのうち、景気後退に向かったのは3回であり、いずれも、原油価格が2倍以上、上昇していると述べました。今回も、(どこから考えるかが問題ですが)天然ガスや原油価格は、2倍超に上昇していると考えることもできます。
これに対し、「現在の経済は、原油に対する依存度が低い」という考えもあるでしょう。しかし、重要なのは、「現在の中国が、1970年代当時のOPECに当たる」ということです。
当時の原油は、不可欠かつ希少な生産要素です。その供給が止まったり、価格が引き上げられ、スタグフレーションが強化されました。
対する現在は、中国が世界に生活に必要なモノを供給しています。中国が供給を止めたり、あるいは、輸出品に関税をかければ、世界経済がオイル・ショックに似た状況に陥ると考えられます。
いまこそ、インフレに備えましょう。
重見 吉徳
フィデリティ投信株式会社
マクロストラテジスト
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