経済政策の不透明感から米国株の調整色強まる
足元の米国株式市場では、トランプ政権の経済政策をめぐる不透明感や景気後退への懸念の浮上などを背景に、2月下旬以降、株価の調整色が強まりつつあります。3月13日には、主要株価指数のS&P500指数は直近高値から10%以上の下落となり、調整局面入りしました。
2025年1月20日の第二次トランプ政権の発足以降の米国株は、バイデン政権や第一次トランプ政権と比べても株価の下振れ傾向が顕著になっています[図1]。
政策不透明感が株安に発展した過去の経験では
足元では、トランプ政権の関税をめぐる朝令暮改や、政府機関のコスト削減、外交面での混乱などが政策の不透明感を高める要因となっている模様です。
ニュース報道などをもとに集計された米国の経済政策の不確実性指数は、足元で2020年のコロナ危機に並ぶ高水準に上昇しています。経済政策の不透明感の高まりが株安に発展した過去の事例では、短期的には米国株市場が不安定化しやすい一方、長期的には米国株への買いの好機となってきたという面も指摘できます[図6]。
当面はトランプ政権の政策の行方に加えて、米国経済や米国企業のファンダメンタルズ(基礎的な条件)を慎重に見極めることが重要になると考えられます。
トランプ政権の経済政策の行方には注視が必要
トランプ政権が足元での市場の混乱や景気減速懸念への配慮よりも強気の関税政策を重視している一因として、発足間もない第二次トランプ政権の支持率の高さ(足元では48%前後)があると考えられます[図2]。
ただし、今後も不安定な市場環境が長引くことになれば、トランプ政権としてもいつまでも市場や景気の問題を放置することはできなくなるとみられ、年後半に向けて減税や規制緩和などの景気浮揚策を打ち出す必要性が高まる可能性があります。金融市場にとってはトランプ政権の政策がどのタイミングで保護主義的な路線から成長路線に転換するかが焦点となりそうです。
FRBの今後の利下げ姿勢に市場の注目が集まる
もうひとつの政策の面で米国株の下支え役として注目されるのは米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策です。
当初、米国の金利先物市場では、トランプ政権下での根強いインフレ圧力を警戒し、早期の利下げ終了が織り込まれてきました。しかし、足元の景気後退懸念の浮上と米国株の急落を受けて、先物市場では2026年に向けた利下げの可能性が織り込まれつつあります[図3]。
3月18-19日に予定される米連邦公開市場委員会(FOMC)では、経済の不確実性が高まる中、FOMC参加者による今後の慎重な利下げ継続の姿勢などが示されれば、市場の一定の安心感に繋がる可能性があります。