2030年には患者数130万人…忍び寄る「心不全パンデミック」の恐怖【医師が解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

近年、世界中で「心不全」の患者数が爆増していますが、日本も例外ではありません。国内の患者数は毎年1万人ずつ増えており、2030年には130万人になるという推計も…。「心不全パンデミック」の到来がささやかれる今、日本における心不全の実情について見ていきましょう。“心疾患・心臓リハビリ”の専門医・大堀克己医師が解説します。

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近年、世界中で「心不全の患者数」が爆発的に増加

新型コロナウイルスの感染拡大により、急激に知れ渡った言葉の一つに「パンデミック」があります。

 

「パンデミック」とは、感染症や伝染病が世界的に大流行することです。歴史的に見れば、14世紀にヨーロッパで流行した黒死病(ペスト)、19~20世紀にかけてアジアやロシア、北アフリカなどで次々と大流行したコレラ、1918~1919年にかけて全世界で2500万人が死亡したといわれるスペインかぜなどの例があります。そして2019年、中国で初めて発見された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、現在もまだ猛威をふるっており、パンデミックという言葉はもはや流行語ではなく、すでに人々の暮らしに定着した感があります。

 

このように、本来「パンデミック」とは感染症や伝染病の感染拡大について述べる言葉ですが、「心不全パンデミック」という言葉があるのを知っている人は少ないと思います。「心不全パンデミック」とは、文字どおり、心不全の患者数が急激に増加することです。もちろん心不全は感染症でも伝染病でもありませんから、「人から人へウイルスがうつり、次々と心不全を発症させてしまう」ということはありません。

 

ではなぜ「心不全パンデミック」という言葉が生まれたかといえば、ここ数年心不全の患者数が急激に増加しているためです。

 

心不全の患者が増えているのは日本だけでなく、欧米やほかのアジア諸国も同様です。国や地域を問わず、世界中で爆発的に心不全の患者数が増えている現状に警鐘を鳴らす意味から、「心不全パンデミック」という言葉が用いられているのです。

 

世界で「心不全パンデミック」という言葉が用いられるようになったのは、今から11年くらい前のことです。特に、心不全の患者が急激に増えていたヨーロッパでこの言葉が使われるようになりました。

 

一方、日本で「心不全パンデミック」が話題になり始めたのは、2〜3年くらい前のことです。その背景には、ヨーロッパ同様、日本でも急激に心不全の患者数が増加したこと、それから、それに伴う医療費の増加や、患者の家族の負担増などがありました。

 

現在も日本では心不全の患者数が急増しています。「我が国における新規発症心不全の推移」のグラフ(図表1)を見ると、1950年には5万人に満たなかったのが、年々右肩上がりに増加し、1990年には10万人を突破しました。その後もさらに増え続けており、2030年には35万人を突破するだろうと予測されています。

 

Shimokawa H et al. Eur J Heart Fail 2015:17:884-892より改変
[図表1]我が国における新規発症心不全の推移 Shimokawa H et al. Eur J Heart Fail 2015:17:884-892より改変

 

また心不全の患者数は毎年約1万人ずつ増加しており、2020年には120万人、2030年には130万人になると推計されています。

日本の「患者急増」も納得…心不全と高齢化の関係

日本で心不全の患者数が急増している理由は「高齢化」です。現在日本は世界に例を見ないスピードで、高齢化が進んでいます。2020年の平均寿命は女性が87.74歳、男性が81.64歳と、いずれも過去最高を更新しました。世界的に見ても女性は世界1位、男性は2位と高レベルであり、男性は世界1位のスイス(81.9歳)に、0.26歳劣るだけです。

 

なぜ心不全が高齢化と関係するのかといえば、「心臓が長年働き続けた結果、悪くなってしまった状態」だからです。

 

心不全を簡単に定義すると、「心臓が悪いために息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなって生命を縮める病気のこと」となります。

 

この定義は2017年10月、日本循環器学会と日本心不全学会によって作られました。これでも十分、分かりやすい定義だと思いますが、もっと端的にいうとこうなります。

 

「心不全とは、心臓がギブアップした状態」

 

心臓は生まれてから死ぬまで、ほんの一瞬も休むことなく動き続けています。年齢を重ねれば重ねるほど、心臓に過去のダメージが積み重なり、その結果ギブアップするのも当然といえるかもしれません。

日本人の死因第2位「心疾患」、そのほとんどが心不全

心不全の患者数が急増していることからも分かるとおり、心不全は決して珍しい病気ではありません。著名人や芸能人の訃報が伝えられるとき、「死因は心不全でした」という言葉を耳にすることも多いです。

 

2021年6月、厚生労働省が発表した「人口動態統計」によると、日本人の死因トップはがん(悪性新生物)で27.6%、2位は「心疾患(高血圧性を除く)」で15.0%を占めました。

 

このデータは心臓にまつわる病気(高血圧性を除く)を統計の対象としていますが、実際のところ、心疾患のなかで死亡率が最も高いのは心不全です。

 

同じく、2021年6月に厚生労働省が発表した「人口動態統計」では、心疾患(高血圧性を除く)による死因の詳細な内訳も発表しています。それによれば、心不全が圧倒的な1位になっており、2位の「その他の虚血性心疾患」や「不整脈及び伝導障害」「急性心筋梗塞」を大きく引き離しています(図表2)。

 

厚生労働省「人口動態統計(2021年)」より著者改変
[図表2]日本人の心疾患(高血圧性を除く)による死亡数と死亡率 厚生労働省「人口動態統計(2021年)」より著者改変

 

心不全の怖いところは、一度発症すると「完治することがない」ということです。衰えてしまったポンプはなんとか修理することはできても、ほぼ新品の状態に戻すことはできません。そのため心不全を一度発症すると、入退院を繰り返したり少しずつ症状が悪化したりして、やがて死を迎えることになります。

 

また、心不全の患者は死亡率が高いだけでなく、心不全増悪による再入院率も高いという報告もあります。

 

 

大堀 克己

社会医療法人北海道循環器病院 理事長

日本胸部外科学会指導医

日本外科学会認定医

日本医師会認定産業医

 

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社会医療法人北海道循環器病院 理事長 日本胸部外科学会指導医
日本外科学会認定医
日本医師会認定産業医

1968年、札幌医科大学胸部外科(現心臓血管外科)に所属して以来、今日まで一貫して心臓血管系と呼吸器の疾患に対する外科療法に携わり、現在はドイツのハンブルク心臓リハビリテーション協会と連携しつつ虚血性心疾患に対する心臓リハビリテーションに取り組んでいる。

著者紹介

連載心不全に負けない完全治療マニュアル

本記事は、大堀克己著『心不全と診断されたら最初に読む本』(幻冬舎MC)を抜粋・再編集したものです。

心不全と診断されたら最初に読む本

心不全と診断されたら最初に読む本

大堀 克己

幻冬舎メディアコンサルティング

心不全と診断されても諦めてはいけない! 一生「心臓機能」を維持するためのリハビリテーションと再発予防策とは? “心疾患・心臓リハビリ”の専門医が、押さえておきたい最新の治療とリハビリテーションを解説します。

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