(※写真はイメージです/PIXTA)

日本人の死因第2位を占めるのは「心疾患」ですが、中でも特に死亡率が高いのが「心不全」で、その5年後死亡率は、死因第1位の「がん」よりも低いとされています。本稿にて、命の危険を見逃さないために知っておきたい知識を見ていきましょう。

Q1. 「心拍数」と「脈拍数」はどう違うのか?

■通常、心拍数と脈拍数は「イコールの関係」だが…

心拍数とは、1分間に心臓が拍動する回数のことをいいます。一方、脈拍とは1分間に末梢血管が脈動する回数のことをいいます。通常は、心臓の拍動は体のすみずみに脈拍として伝わるため、心拍数と脈拍数はイコールの関係になります。

 

しかし不整脈があり心臓の拍動が不規則になると、心臓から送り出される血液量が一定ではなくなります。このときに手首にある動脈で脈を取ると、一瞬、脈を感じられなくなることがあり、結果として、心拍数に比べて脈拍数の方が少なくなることがあります。

 

ただしこうした場合でも、頸動脈で脈拍を観察していれば、脈動が弱くても感じることができるため、「心拍数=脈拍数」となります。しかし通常、脈拍は手首の内側にある橈骨(とうこつ)動脈で測定するため、その場合は、心拍数の方が脈拍数よりも多くなります。

 

不整脈の発生数が多くなければ、手首で脈拍を測定しても問題ありません。ただし、不整脈がある場合は頸動脈で計測する方が正確です。

 

血圧を測定するときには、たいていの場合同時に脈拍も計測できますし、また心拍計も市販されているので、日常の健康管理ではどちらを計測しても問題ありません。ただし、心拍数の方が心臓の働きを正確に調べられます。

Q2. 「脈が速いと短命」って本当?

■脈の速いネズミは短命、脈の遅い象は長寿。では、人間は?

人間以外の生物では、心拍数によって寿命の長さに差があることは報告されています。

 

例えばネズミの心拍は速くて寿命は短く、一方、象の心拍は遅くて寿命は長いというように、一般に小さな動物ほど心拍数は多く、大きな動物ほど心拍数は少なくなると考えられています。なぜなら、小さな動物は心臓も小さく、一度に送り出せる血液の量が少ないからです。

 

しかし人間に、この説をそのまま当てはめることはできません。なぜなら人間は、心臓のサイズが小さい割に、寿命が長過ぎるのです。

 

通常、人間の心拍数は1分あたり60〜100回です。これをほかの哺乳類と比べると、キリンやトラと同じくらいです。しかし、キリンやトラの寿命はせいぜい20年程度であり、日本人の平均寿命の4分の1程度しかありません。

 

ただし、明確なエビデンスはないものの、「脈が速いと短命」という説は正しいと考えることもできます。なぜなら、心機能の低下した人に心拍数を遅くする薬を使うと予後が良く、寿命が長くなることが確認されているからです。

 

その反対に、なんらかの原因により1分間あたりの心拍数が120以上という状態が持続すると、やがて心臓は疲弊して心不全になることが分かっています。

 

どのくらいの心拍数がよいのかという基準は厳密には定められていませんが、心不全の治療でβ遮断薬という心臓の働きを少し休ませる薬を増量する際には、1分間あたり50回以下にならないように推奨されています。あまり落とし過ぎると心臓から血液が送り出される拍出量が減少してしまうためです。

 

「脈が速いと短命」ということは断言できませんが、「脈が速いと心臓に負担を掛け、やがて心不全につながりやすい」ということはいえるのではないかと思います。

 

 

大堀 克己

社会医療法人北海道循環器病院 理事長

 

 

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※本記事は、大堀克己氏の著書『心不全と診断されたら最初に読む本』(幻冬舎MC)を抜粋・再編集したものです。

心不全と診断されたら最初に読む本

心不全と診断されたら最初に読む本

大堀 克己

幻冬舎メディアコンサルティング

心不全と診断されても諦めてはいけない! 一生「心臓機能」を維持するためのリハビリテーションと再発予防策とは? “心疾患・心臓リハビリ”の専門医が、押さえておきたい最新の治療とリハビリテーションを解説します。

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