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はじめに
米国の労働市場は新型コロナの影響で20年春先に大幅な落ち込みを示した後、20年5月以降は回復基調が持続している。
一方、堅調な労働需要に対して労働供給の回復が遅れている結果、労働需給の逼迫を背景に賃金上昇圧力が高まっている。
22年1月のFOMC会合議事要旨では、一部で異論は示されているものの、多くの参加者が労働市場について既に政策金利引き上げの条件である「雇用の最大化」に到達したか、非常に近いと評価していることが示された。このため、FRBが物価指標としているPCE価格指数が物価目標を大幅に上回り、前年同月比でおよそ40年ぶりの水準となる中、3月FOMC会合での利上げが確実となっている。
本稿では足元の労働市場の回復状況を確認するほか、今後の見通しについて論じた。結論から言えば、当面、労働需給の逼迫を背景とした賃金上昇圧力は高止まりしそうだ。
労働市場の回復状況
雇用者数、失業率…雇用の回復基調が持続、失業率は新型コロナ流行前の水準が視野に
非農業部門雇用者数は、新型コロナの感染拡大の影響で20年3月から4月にかけて大幅な雇用喪失となった後、20年5月から雇用の増加基調が持続している[図表2]。
とくに、21年の月間平均増加ペースは+55.5万人増と1950年以降で最高となった。22年1月も前月比+47.8万人と好調を維持しており、足元でオミクロン株の感染拡大の影響は限定的に留まっている。
一方、雇用回復は持続しているものの、雇用者数の増加幅は雇用回復が始まった20年5月から22年1月までの累計で+1,912万人と20年3月から2ヵ月間の雇用喪失幅である▲2,199万人を依然として▲288万人下回っている[前掲図表1]。
このため、22年1月の雇用増加ペースが継続する場合には、雇用者数が新型コロナ流行前(20年2月)の水準を回復するのに、6ヵ月を要する状況である。
また、累計雇用増減を業種別にみると新型コロナの影響を大きく受けた対面型サービスの「娯楽・宿泊」が新型コロナ流行前の水準を▲175万人下回っており、回復の遅れが目立っていることが分かる。
失業率は20年4月に14.7%まで上昇した後、22年1月は4.0%と前月の3.9%からは小幅に上昇したものの、20年12月のFOMC会合で示されたFOMC参加者の長期目標に一致したほか、新型コロナ流行前(20年2月)の3.5%に0.5%ポイントまで迫る水準に低下しており、回復が顕著となっている。
失業率は新型コロナ流行前の水準への回復が視野に入ってきたと言えよう。
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